鼓動
胸の高鳴りというものを感じたことが今の今まで感じたことがなかったのだけれどこれからも感じそうにはなさそうである。目の前の彼女は何時だって胸の高鳴りというものを感じているそうでそれはきっと病気できみは病人だからなんじゃないのか?といえば「違う」といった。胸の高鳴りは不整脈とか動悸とかそんな汚いものとは違う、と。
「わたし、あの人と一緒にいると胸の高鳴りが聴こえてくるの。いっつもあの人のこと気になって考えてるから」
疲れそうだと思った。いっつも同じことを考えるなんて頭がわるそうだし同じことばかり考えていたら楽といえば楽そうだけどそれは生活する上で疲れそうだ。どうやら彼女は“あの人”に恋をしているようだった。長々と永遠に喋り続けるんじゃないかってぐらい話していて暖かかった日差しもだいぶ傾いてきて彼女の話をは終わった。それから彼女は満足したのか「サヨナラ」といい素っ気なく帰っていった。彼女は僕と話しているときも“あの人”のことを考え胸の高鳴りを感じていたのだ。
次の日、いつも会う彼女に会おうと思い何時もの通りの場所に向かったが彼女はいなかった。仕方なく彼女の家に向かえば彼女のお母さんが「ごめんね、娘は…」と何か言いづらそうに口ごもった。
亡くなったのよ。心臓の病気で。
とそれだけだった。
ああ、やっぱり。彼女は病気だったのか。だからいつも胸の高鳴りがするといっていたし僕の考えは間違っていなかったのだ。昨日の内に病院へ行くことを勧めておけばよかった。そうすれば彼女が亡くなることなんてなかったかもしれなかったのに。亡くなった彼女はもう胸の高鳴りというものを感じることはないだろう。結局、胸の高鳴りというのは病気でしかないことが分かったのだ。僕はまだ病気じゃない、それだけだった。彼女は未だに“あの人 ”のことを考えているのだろうか。

20140125


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