ラブ・ポーションん
 ケイイチはなかなかに顔が整っている。これまで何人ものきれいな女と付き合ってきたし、こらからもそんな生活をしていくものだとケイイチ自身思っていた。
つい最近、結婚した。
妻、ユリは世間一般で美人といわれるような女ではない。整ったケイイチとは正反対の人間であった。
ぼんやりとユリがピアノを弾くのを眺めながらどうしてユリなどという女と結婚してしまったのだろう、と思っていた。
美しくなんてないし、料理もそこそこであるし器量はよくないきれい好きではあるけれどそれだけでセンスも並みで特にこれといったなにかがあるわけではない。強いていうならピアノぐらいだろうか。自分は美人と結婚するものだと思ってた。いや、しようと思ってた。
 それがどういう訳だか彼女と結婚した。結婚しようと彼女と出会う前に決めていた女がいたはずなのに。婚約も済ませこれから楽しい生活がはじまるものだとばかり思ってたのに。
 美人で器量もよくてセンスもよくて料理上手で…。
ユリとは全く正反対の人物だったユリほどピアノは出来ないが別にピアノなんて出来なくていい。出来なくたって実生活になんの支障もきたさない。それなのにどうしてユリなどという女と結婚してしまったのだろうか。
 ユリという女のことは知っていた。会社の同僚であったし時々仕事について話すこともあったが結婚するほど仲の良かった覚えはない。
「紅茶飲む?」
「あ…うん。」
思考を遮るように話かけられた。そういえばユリと結婚する以前は紅茶なんて飲まなかったはずだ。コーヒー派で紅茶は苦手だったはずなのに。ティーカップに注がれた琥珀色の液体はあまりおいしそうには見えない。砂糖とミルクを大量にいれて飲んだがおいしくは感じられなかった。そう思っているうちにユリはピアノを弾き始めた。ゆっくりとした音色で少しずつまどろみ始めた。


 ユリはケイイチが好きでしかたがなかった。しかし、ケイイチには美しい彼女がいて結婚をするという。
自分は美人でもなんでもなくて取り柄もない。知り合い程度でしかないユリがケイイチと結婚するなんてあり得ない話だった。
そんなときだった。胡散臭い占い師とかいう人に愛の妙薬はいらないかい?と言われた。
愛の妙薬ぅ〜?
嘘臭い嘘臭い。そう思っていたのに身体と口は勝手に動いて「買います。」だなんて言ってたのだ。
買ってしまったものは仕方ないとケイイチの隙を見計らって粉末状の妙薬をコーヒーの中に入れた。
そうするとどういう事だかケイイチが自分を好きだと言ってくれたではないか!美しい彼女との結婚も無くなって自分と結婚するという。ああ、あの妙薬は本物だったのか!
再び胡散臭い占い師に会った。
「あれは継続して飲ませないと効果が続きませんよ。」
「じゃあ、買います。」
そうして定期的に彼に妙薬を飲ませ結婚し私は会社を寿退社し幸せな生活を送っている。

「……ユリ?」
「ケイイチさん、こんなところで寝てたら風邪引きますよ?」
「…ああ、ごめん」
眠そうに大きなあくびをして目をこすった。
ああ、なんて幸せなんだろう!


20140104




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