カランコロンみたよ。
うん。どうだった?
分からない。
一番小さい弟がカランコロンをみたと言った。わたしにはそれが何なのか全く解らなかったが小さい子は独自の世界を自分の中に創る。だから、それもまた小さい弟の世界にあるなにかなのだろう。徐々に大人に近付いているわたしには解らないものが沢山あるのだ。
「カランコロンはきいろくてあおくてあかくて」
「うん」
「ほそくなったりおっきくなったりするよ」
「うん」
「ねえちゃんにもこんどみせるよ」
「うん」
カランコロン、カランコロンと言いながら小さい弟はわたしの前から去っていって奥のほうでおもちゃ箱でもあさっているのだろうか。ごそごそと音が聞こえてくる。
カランコロンとは一体なにか。気になったがわたしには到底わからない。何なのだろう。そういえば小さい弟のひとつ上の妹も小さい弟と同じようなことを言っていた気がする。カランコロンでは無かった気がするが妹もなにか似たようなことを言っていたはずだ。
「分からないね。」
そうだね、わたしの隣にいる“彼”が優しい声で答えた。
20120526