君は気が付かない
「桜の木の下には死体が埋まっているらしい。」と友人が言った。
「馬鹿じゃないか?」
思わず出てきた私の言葉はこれだった。たしかこいつはそんなに頭の弱い奴ではなかったと思うのだがこんなことを言うなんて思いもしなかった。これでまた私の脳内のデータベースに新たな情報がインプットされた。
「桜の木の下に死体が埋まっているはずがないだろう。」
「よく言うじゃないか。」
「君は何も分かっていない。」
私が強い口調で言えば不快感を露にした。
間違っているのは君だ、と言っても一向に間違いを正そうとしない。
黒い学ランの襟に少しむず痒さを感じて指で触れる。
よく言う、と彼は言ったが本当に彼は馬鹿だ。もし埋まっているとしたら長い桜並木の一本一本の木の下に埋まっているとでも言うつもりか。そんな馬鹿げた話があるはすがない。一体、死体はどこから調達すると言うんだ。まさか政府みずからが進んでやっている訳ではあるまい。
「君は本を読んだ方がいい。」
「だから、良く言う、っていう話じゃないか。」
「それを信じている馬鹿もいるだろう?君にはそんな馬鹿どもと同類になって欲しくないんだ。」
それじゃあ、と言い友人の前から私は去った。私の言葉で彼が何を思ったかは分からない。私には以心伝心が出来ない。
私は本を勧めたが彼が私の真意を汲み取ってくれるかも分からない。
そう言えば彼の愛読書は漫画だった気がする。



120309


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