自身は選択を間違えたようだ
人が嫌いと言う訳ではなかった。嫌いと言うよりも苦手だった。コミュニケーション能力や協調性がない訳ではない。ただ、人と話すときにどうしても緊張してしまうのだ。話し掛けられ相手をみた途端に身体じゅうの血液が顔に集まるような気がして火照る。手は汗で湿るし、背中には冷や汗をかく。
 知らない人ならなおさらだ。ずっと笑顔を貼りつけて当たり障りのない受け答え。これが嫌で仕方なかった。
 こうなってしまうのは分かっていた。人と話しているとなんだか自分がとても変やつに思えてきて、どうしようもない羞恥心が湧いてくるのだ。だが、どうして羞恥心が湧いてくるのかはわからなかった。
 こんな自分とおさらばしよう、とまずは人の真似をしようと考えた。人のように話し方を真似てこれは自分ではないのだ、と考えることで解決しようとした。結果としてこれは成功した。いつものように羞恥心が湧いてくることもなかった。それを続けてもう何年になるか。
長らく人の真似をしてきた。人の真似をすることで羞恥心が湧き出ることはなくなった。だが、それは本当の自分自身ではないのだ。本当の自分と嘘の自分。ひとりになったときに嘘の自分を考えるだけで羞恥心が湧き出てくるのだ。



110729
120123 収納


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