がらがらと彼女を乗せた馬車は進んでいく。彼女は酷くやつれた顔で昨晩わんわん泣いたのだろう。目が腫れている。綺麗な髪は真っ白になっていて家の近くにいた婆さんを連想させた。美しかった彼女は今ここにはいない。やつれた白髪に汚い婆さんだ。しかし、婆さんには不似合いな豊満な体つきで薄汚れたきらびやかであったであろうドレスを着ている。
 それにしても彼女は可哀想だ。遠くからわざわざ政略結婚と言うことで好きでもない馬鹿な汚い王様と結婚させられて子供を産んで市民には革命を起こされるしこの国が大変なのはお前が豪華で淫乱な生活を送っていたからだとされた。そんな事実はないのにねぇ。罠に嵌まってしまったんだねぇ。彼女の美しさに嫉妬していたのかねぇ。
 いくら同情しても自分にはなにも出来ない。ぽたぽたと涙を流す彼女を目の前にしても口を開きはしない。がらがらと馬車が進んで彼女に最後が近付いてく。
 革命家もお粗末なもんだ。彼女に嫉妬したどこかの貴族の偽物のビラに惑わされるなんて。彼女は悪くない。その事実を知っているのは自分だけだろう。
彼女はケーキがパンの替わりにならないことくらい知ってるどこかの誰かとは違うのに。
 近付くにつれ涙は大粒になっていった。ぼたぼたと流れる涙は薄汚れたドレスに染みをつくる。泣いている女性にハンカチでも渡せたら自分はかっこいい男なんだろうけどさすがに渡せない。そんな事お粗末な革命家たちに知られたらどうなることだろう。やはり、首を切られてしまうのだろうか。
 緩やかに止まった馬車は彼女がもう終わりだと言うことを示す。彼女は降りた。周りは民衆で沢山になっていた。
静かな顔で彼女は歩く。もう終わりだと言うのに先ほどまでの涙は嘘のようだ。
「刑を執行します。」
がやがやと民衆たちの声が聞こえてくる。煩い。
下を向いた彼女は一体どんな表情なのだろう。覗きたいが覗くことは出来ない。
 彼女が終わってしまった途端、民衆から歓声が上がった。彼女の表情が気になったが今さら見る気にもならなかった。気持ち悪い。


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