その日世界は反転する
 モノクロでセピアな世界に自分はいた。なんだかよくわらない。言うなれば点と線と影の世界だろうか。どうやらそこは駅のプラットホームのようで自分の世界と全く同じで違うと言えばモノクロなところだろうか。それ以外は何も変わりはない。ベンチがあって自動販売機があって点字ブロックがあって。
 ただ、人が誰もいないのだ。
モノクロな世界には人がいない。しばらくプラットホームを歩いた。カツカツと自分の歩く音が聞こえるだけでそれ以外の音が何一つとしてしない。
カツ―ンカツ―ン
足音が聞こえるばかりだ。線路には電車がない。これからくるのだろうか。
好奇心に駆られてプラットホームの一番端まで一気に走り抜ける。ひかれた線路はどこまでも続いているように見える。
 線路に降りて反対側のプラットホームに行った。また、カツ―ンカツ―ンと自分の足音だけ聞いて歩いた。
「どうしましたか?」
さっきまでここに居たのだろうか。真っ黒な髪で白い肌でワンピースを着た女がベンチに座ってこちらを見ていた。
「ここに電車は来るのでしょうか?」
「ええ」
「時刻表はありますかね?」
「いいえ」
時刻表がない駅などあるものか。だけど、もう一度聞いても「いいえ」の一言で何故、時刻表がないのかは教えてはくれなかった。
 女に勧められて隣に座ってただぼんやりとしていた。空は白くて雲らしきものもない。もしかしたら晴れているのかもしれないが白い空に雲が隠れているだけかもしれない。時計がないので時間も分からない。自分がここにどれくらいいるのかも分からない。
分からないことしかなかった。
女との会話もないままぼんやりと座っていると不意に電子音がプラットホームに鳴り響いた。
びーびーと鳴り響くが何処から音が出ているのか分からない。また、分からないことが増えた。音は一向に止もうとしない。
「この音は何でしょう?」
「あなたは分かりませんか?」
「はい、全く。」
「そんな事はないはずです。」
そう言った女は白い手で肩を押した。押された自分はふわりとスローモーションのように崩れる。背中からばたりと倒れるようだから最後に見えたのは空で白だったはずの空は真っ青になっていた。
 少し頭痛がする。



120119
t/puxy


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bkm
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