さかなになってうみをおよぎたいよ
 なんだかまっ逆さまになって急降下している気分だった。もしかしたら、急降下しているのかもしれない。とはいえ自分はまっ逆さまに急降下したことがないからその気分が分からない。
「ヤマイヌくん」
「なんだい?」
近くにいたヤマイヌくんに話掛ければ人の良さそうな笑みでかえされた。ヤマイヌくんはいつもそうで誰からでも好かれて評価が高い。
「君は急降下したことがあるかい?」
「何がだい?成績?アトラクション?」
「あ―、成績ではないことは確かだ」
自分でも全く何をいいたいのか分からない。分からなければ伝わるはずもなくヤマイヌくんには何ひとつとして自分の言いたいなにかが伝わることはなかった。
 急降下している気分とはなんだ?ヤマイヌくんに言われるまで急降下する気分がどういう意味での急降下なのか考えもしなかった。急降下。急降下。ひとりで悶々と考えてもそれは思いつかなくて、だからと言って誰かに相談するには曖昧過ぎて説明が出来ない。
この状態が気持ち悪い。思い出せそうなのに思い出せないときとかくしゃみがでそうなのにでないとか、そんな感覚に似ていて気持ち悪い。
あ、もう急降下している気分じゃない。


110924


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bkm
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