雨は哀しみではなく笑いの涙で出来ているのよ

ざあざあ、と雨が降っていた。これは参った、と下駄箱から靴を取りだしながら思っていた。
確か、降水確率は30パーセントだったような気がする。半分以下だったのに降るなんて天気予報はうそつきだ、なんてあほらしいことを考えてるしかなかった。
もともと折り畳み傘なんて持ち歩きはしない。いつもなら傘立てから捨てられたのか忘れられたのかよくわからないビニール傘を適当に引っこ抜いて家に帰っていた。あいにく今日は天気予報が外れた天気。
いつもの自分と同じような奴が何人もいるらしい。
馬鹿正直で、正義な友人のAくんはもちろんそんなことはせずに雨に濡れながら帰っているのをさっきみた。
馬鹿正直でも正義感溢れる自分ではないのでそんなことはしない。都会の雨は酸性雨になってるし空気中の塵もたっぷりとついているから濡れたくなかった。とは言ってもここは都会と言うにはほど遠い場所だ。
雨止まねぇ―かなぁ、なんて考えながら数分、数十分そこでまっていた。
足音がして、みれば女子生徒。
どうせお前も折り畳み傘なんて言うもんを持っているんだろう、と心のなかで少しの恨めしさを込めて言ってみたら女子生徒は携帯をいじりだした。
数秒使ってすぐにしまった。
いつ帰るんだ?と思っていても一向に帰らない。
もしかして自分と同じ状況なのかなぁ、と思いながらちらり、と女子生徒をみた。無表情のまま降ってくる雨をみている。
晴れているいつもなら剣道部だとかバスケ部だとかの声が聞こえてくるのに雨が降っているせいでノイズがかっている。
「傘、忘れたの?」
どういう訳かわからないけれど女子生徒に話かけた。女子生徒はこちらをちらり、とも見もせずに「ええ、そうです。」と答えた。
「俺と同じじゃん」と言えば「違います」と一刀両断された。
「これから迎えにきてくれます」
「校門まで距離あるよ?」
ピピピ、と初期設定のままなのか携帯のメロディがなった。また、数秒いじってすぐにしまった。
「では、さよなら」
それだけ言って女子生徒はバックを抱えてダッシュで走って言った。

ああ、そろそろ帰らなきゃな。


11/07/21


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