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▽2016/04/25
「人が人じゃなくなる時ってどんなときだと思う?」そういわれて一体何を言いたいのか訳が分からなかった。人が人である限り人は人である。たとえ骨になろうと“人”という認識は変わらず、骨であろうと人なのである。それこそ、骨と化してしまったのに故人の思いをはせるというのは

▽2015/08/11
 最近のあの人は運がないらしい。その上泥棒に入られて財布やら洋服なんかも盗まれて、財布はともかくそこらへんに売っている安いアパレルメーカーの洋服を盗んでいくなんて物好きにもほどがある。それとも、そういった趣味でもあるのだろうか?洋服を盗むなんて江戸時代の強盗か。
その前は夜に出したゴミが漁られ、朝に住んでいるアパートの大家さんに「ちゃんと出してよね!」と怒られ、同じ日にスリにあって、次の日、すられないようにバックに新しく買った財布をいれていたらバックごと盗られてしまったようである。
なんとも運のない事やら。

▽2015/05/02
 何を食べても味がしないんだ。と言っていた友人が先日死んだ。崩壊が始まったんだと私は薄々感じていた。いや、彼自身も分かっていたのだ。
 この世界で崩壊が始まって数年、世界人口は半減、経済は崩壊、国家という枠組みも意味をなさなくなっていた。

▽2015/01/27
社会体制が崩壊して幾分かの年月が経った。まだ、政府が政府として機能していた頃を知っている人々は「あの頃のはよかった」なんて言ってばかりいるけれど今や存在だけとなった政府しかしらないボクにとっては“あの頃”に固執する人々の気持ちなんて一つも分からなかった。
昔は綺麗に舗装されていたであろうコンクリートの道も今はボコボコと波うち歩き辛い。怪しく光ネオンとサーチライトにこの街の喧騒を感じた。
「おばさん、今日は天ぷら丼食べられる?」
「なに、言ってるのよ。天ぷらは無いわよ。今日も中華丼なんだから」
最下層“スリー”の街のすみっこにある定食屋にボクは入った。この店の店主、ミイコおばさんとは昔からの顔馴染みである。おばさん、というには些か見た目が若いが彼女がおばさんと呼べ、と言っているのだから問題はないのだろう。
いつも通りの中華丼を食べながらボクはおばさんに話しかけた。この店にはボク一人しかいない。
「」

▽2014/11/29
妖精の街
愛のない街だとどこかの誰かがこの街のことをそう言っていた。それがどういう意味なのか自分にはひとつとして理解出来なかった。人は優しいし食べ物だって美味しい、長らく旅を続けてきたがこんなに良い街は初めてである。
この大陸はいわゆる、都市国家というものが通常の大陸である。完全に他国との国交のない都市もあれば交易により栄えている都市もある。文化も様々であるがひとつ共通しているのは言語であった。これが何を意味するのかは分からない。現在では全く違った文化をしているのにもしかしたら元は同じ民族であったのかもしれないという推測くらいしか出来ない。彼らの起源が何処にあるのかは置いておくとして隣の大陸から旅行に来た自分は“愛のない街”と言われていた都市に来ている。
この“愛のない街”は非常に発展している都市である。科学もこれまで見てきた都市の中でも最高かと思われる。技術のレベルはきっとこの世界の中でも一番なのではないかと思われる。少なくとも自分が今まで見てきた国の中では一番である。そんな国のカフェテリアでコーヒーを頼めばいたって普通の、故郷で飲んだコーヒーと変わらない味がした。
「あなた、旅行客かしら?」
「ええ、フェリーで来ましたよ」
「あら、珍しいのね。フライトで中央空港に到着するのが一般的でしょう?」
「僕は情緒を感じたいのさ」
「なあに?それ」
意味が分からないというように話しかけてきた女性は首をかしげた。
「郷愁の思いを感じながらこの街に近付いたわけさ」
「ふーん、旅人さんは分からないものね」
それからその彼女にオススメのホテルを教えてもらいその日は夕飯を食べて寝た。
次の日、日が高く昇ったころ目が覚めた。朝食とは言えない朝食をルームサービスでとり、急いで準備をして街を散策しに出掛けた。
ぶらぶらと歩いていると昨日みた彼女が前方から歩いてきた。
「あら、昨日ぶりね」
「まさか、今日も会えるなんてね」
彼女はなかなかの美人である。少しだけ気の強そうな雰囲気があるがそれでも上品さは失われていない清楚な服装であるとか、きっと母国であったなら「モデルに」なんて言われそうなプロポーションである。
彼女とはこの国で旅行をしている間、案内を毎日してもらった。君に仕事はないのかと聞けば「そんなことは気にしなくていいのよ」というだけでなにも教えてはくれなかった。まあ、見ず知らずのただの旅行者に付き添って遊んでいるような暇を持て余す金持ちなんだととりあえず自身を納得させ、一週間彼女と過ごした。この国は思ってた以上に小さい。半径10キロメートルの円形になっており、一週間もあればまわれてしまう大きさだ。


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