待てない赤葦
「赤葦のにおいー。」
「やめろ、変態くさい。」
「あはは、ごめんて。」
俺の内心も知らずにべたべた触ってきて、俺を膝に乗せてきては、くふくふと左肩に顔をつけて笑う苗字に、むらっときたので。
「あ、れれ?」
「苗字のにおい。」
「お、おうっ?!ちょ、エッ赤葦!?」
振り向きざまに押し倒し、耳に噛み付いてやったら、予想以上にいい反応で、新鮮だった。
むらむら、湯気のように立ち上る。
「…あの、赤葦サン。ちょっと、どいてくれないかなー、なんて、」
「あ?」
「ナニか当たってますけど、」
「誰だよここまで煽ったの、責任とれ。」
「あっはー、赤葦それ真顔の冗談キツイ。」
ぞくぞくとした寒気にも似た、腰から脳髄にかけてはしったそれに流されるように。
「え、まじで、おい。」
苗字のベルトに手をかけて。
「突っ込もうなんて思ってないよ、安心しろ。」
取り敢えず蒼白な顔にひとつ、やさしくキスを落とした。
こう、有無を言わせない、静かな強引さが、ね。
title:背徳は背骨から
20150306
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