掃き溜め | ナノ
押せ押せな菅原

「苗字の手、でかいな。」
「スガもだろ、セッターの手ー。」
「う、ん。」
「ああ、でもスガのがやわこい。てかちょう手ぇキレー。」
「あ、ありがと。」
「なに、どんな手入してんの?すべすべ。」
「…なあ、苗字。」
「うん?」

「たっちゃった。」


ガタガタ、がったん

机を押し退けて逃げようとするも、菅原ははにかむように笑って俺を壁際へと追い込んだ。

「だめだよ、」

なにがだ、とは喉が渇いて言うに言えず。

「壁際じゃ、やりにくいじゃん。」
「そっちかよ。」

今度は出た。菅原はにこにこ笑っている。

「…タンマタンマ、」
「なに?」
「俺、男。」
「知ってるよ、どうしたの。」
「ちょちょい。待て待て、その手をしまえ。」

すっとベルトにかかる男の手を退かすときに見えた元気なスガの男の象徴に、内心冷や汗ダラダラな俺は冷静を装って声をかけた。

「スガくんや。」
「うん?」
「俺ら、クラスメートですよね?」
「ううーん、そうだけどちょっと違う。」
「あれ何がどう違った。」

ふふ、と笑うスガはぐいぐいと顔を近づけてくる。
俺の頭の後ろはコンクリートの壁である。詰んだ。

「すきだよ、苗字。」

うそだろ、の言葉は、丁寧に手入れされた掌よりもやわこい物に塞がれた。




学校だったから本番三歩手前で勘弁してもらった。

20150303

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