こちらの続き。
「何しに来たよ。」
「遊びに!」
「帰れよまじで。」
女子が喜ぶような顔してるくせに、俺みたいなのを好きだの何だのいって引っ付いてくるこいつはどっかがイカれてる。
バレー部主将でセッターで、(っていっても俺はそのポジションがどれほど重要なのかは知らん)そんでもって女の子からおモテになって、以外と男からも度々やっかみくらってて?
そりゃあどっかのネジが落っこちて砕けてもしゃあないかって思えるくらいには、こいつは輝かしくも妬まれ続ける人生を過ごしてんじゃないかなとは思う。
俺は及川のストレスやら溜まったもんの発散を手伝うって名目で、不本意だが周りから見れば及川を独り占めして、心にもない言葉を投げつけているのである。
にこにこ笑って抱きついてきやがるこいつは、本当に何もわかっちゃいない。
あー、マジ殴りたいわこのイケメン。
なんなの、いつになれば終わってくれんの。
いたい。いたい、なんで。
くちびるを触る。ぬるっとした。
指先を見る。血は出てない。
「ぶっせぇく。」
ぎりぎりとほっぺたを力一杯抓られて、その痛みと混乱があいまって目の前がぼやけた。
今日も勝手に苗字の家に押しかけて上がりこんで、ベッドの上でごろごろして、俺なんかに目もくれない苗字をじいっと見つめてて。
それで今日は、見つめてたら目があって。
「泣くのかよ。好きだの何だの言うくせに。」
くちびる、噛まれた。痛かった。
多分キスされた。うん、そうだ。
苗字は泣きそうだった。怒ったみたいなのに、すごく傷ついたみたいな顔をする。
声が出ない。ねえ、なんでこんなことしたの。
ききたいのに、動けない。
それでもなんだか嬉しくて、くちびるがにやにやする。
「…なんで笑うんだよ。」
「、うれしいから。」
舐めた唇はやっぱりぬるりとしていて、むわりと鉄の味が広がった。
20150902
20150922