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最近、恋人とあんまり連絡が取れてないし、部活が忙しいしで会えてない。
これがいわゆる倦怠期というやつだろうか。
信じたくはないが事実、ちょっと前の練習試合帰りに、ヤツがかわいい女の子と並んで歩いているのを見た。
そして今日、久々にオフが出来たと連絡を取ってみれば、外せない用事があるからその日は会えそうにないという。
なのでこの事を、誰かに相談して、意見を聞いてみようと思う。
ちなみに自分の中では浮気の文字が大きく出ている。

「それもう浮気じゃね。」
「やっぱり木葉さんもそう思いますか。」
「おう。…にしてもお前すげー冷静だな、赤葦。」
「そうでもないですよ。正直家に乗り込んで、マウントポジション取って小一時間ほど問い詰めたいくらいにはもやっとしてます。」
「そ、そうか、…彼女には優しくな。」
「優しくすると調子乗るんで。」

木葉さんに恋人の話をした事はあるけど、それが男だとは言ったことがない。
聞かれてないから、っていうのは言い訳。まあ、俺も体裁を気にしてしまう方なのだ。

「まあ、話し合うのも手だな。俺らって、結構部活でいっぱいいっぱいなとこもあるし。そのコも寂しいんじゃね?」

そうでしょうか。そうだって。

木葉さんと別れたその足で、俺は苗字の家まで行った。
居なかったら居なかったで、また出直せばいいのだから。

しかし俺の心中は穏やかではいられなかった。
インターフォンに応じて出てきた苗字の母親の、名前なら二階にいるわの声に軽く殺意を覚えた俺は、お礼を言って苗字の部屋を目指した。
なんで嘘ついたんだよお前。

ノックもせずに入り、ベットで仰向けに寝転がって雑誌を読んでいた苗字の腹にどすりと跨る。

「え、あかあし、え。」

母親だとでも思っていたのだろう、俺がベットに足をかけた時に雑誌から逸らされ、こちらに向けられた眼は驚愕したように見開かれ、動かなかった。

「おま、なんでここに、」

ゆらゆらと気まずそうにさ迷うその眼に、言い表しようのない苛立ちが募る。
喉の下の奥が苦しくてもどかしくて、声が震えた。
なんでそんな顔するんだ、こっちだって耐えてんだぞ。

「離さないから、女子と付き合えるなんて夢にも思うなよ。」

情けなく震え、ぼそぼそとした声でそれだけ言って、俺はその胸倉を掴みあげて、アホみたいに開かれた口に噛み付いた。
自分からこんな事するのは初めてで、勝手はよくわからない。受け身で悪かったなばかやろう。
雑誌がべにょんと床に落ちる音を聞いた。

首筋に何かがついっと触れる。
くしゃりと襟足を掴まれて、強く引き寄せられるままに身体を委ねて倒れこんだ。
耳元で謝罪が囁かれて、やわく耳朶を噛まれる。
俺は眼を閉じた。この先のオチは、もう分かっている。



20150205
20150307


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テーマ「人外ファンタジー」
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