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どん、と強く当たったわけじゃなかった。
軽く肩が触れ合っただけで、そんなに痛くなくて、でも反射的に、相手にごめん、と声をかけた。

「ごめん。」

そのごめんがお互い重なって、ちょっとだけ瞠目して、今度は俺のいや平気、って声と、

「大丈夫。」

相手のそれが再び重なって。
どちらともなく吹き出してしまった。
それ以来、深くもなく浅くもない交友関係になった。

二年次になった始業式、なんの偶然か赤葦と同じクラスになったことを知った。

ちょっと楽しみになりつつ、新たな教室まで足を運ぶ。それまで三度、教室を間違えた。

やっとの事でたどり着いた、2ー6の室名札に安堵を感じながら足を踏み入れる。
と同時に来る衝撃。すげえデジャビュ、なんて。

反射的に出たワリィ、って俺の声はしっかりとその声に重なった。

「ごめ、ん。」

やっぱりこいつだ。赤葦だ。

「…同じクラス、なんだな。」
「おう、よろしく。」
「ぶつからないように気をつける。」
「おっ、おー。そうだな。」

やべ、笑わないようにしたら声裏返った。
何か喋ろうと思って、先ほどの俺の苦労を吐いてみる。

「ここに着くまで、三回教室間違えた。」
「さんかっ…馬鹿だろ、なんで?」
「最初は一年の時の教室に行こうとして、次は階間違えて、最後は一個手前に入った。」

あっち、と自分が通ってきた道の方を指差せば、呆れたような笑みで俺を見ていた。

ふと赤葦の後ろに女子がいることに気付く。

「ちょっと、180越えの大男が入り口塞いでたら出れないでしょーが。」
「あ、わりーわりー、」

俺はさっさと中に入って避けてやろうとした。
…多分赤葦は外に出て避けようとしたんだろう。

どん、とまた身体が当たる。

「…謝るなよ。」
「ごめ、…とことん波長合わないな、俺ら。」

お互い複雑な表情で見合っていた俺達を、女子が何してんのと笑って言った。

「へーへー今退けますよお。」

くるっと赤葦の肩を掴んで向きを変えさせ、そのまま背中を押して中に入る。

「頑張って以心伝心レベルの仲になろう。」
「無理だろ。」

赤葦にはばっさり切られたけど、なんだかこいつとはやっていけそうな気がする。
うん。今年の抱負、決まったわ。



20150513


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