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※同棲

俺は今、正座をしている。
この柔らかなシーツの上で、愛しい恋人と向かい合って。

その愛しい恋人もとい間向かう赤葦はどこか呆れたような、諦めたような表情で胡座をかいている。

「で、何。」

その声にやっとこさ息を始める。
情けなくも俺は赤葦の乗ったベッドに乗り移ってから今の今まで、息を止めていたのである。辛かった。

額をスプリングに叩きつけ、いわゆる土下座の姿勢で俺は精一杯の想いを吐き出す。

「一夜を共にさせてください。」
「抱き枕ならいらないし、お断り。」
「そうじゃなくて!」

がばりと勢いよく顔を上げた先に見えた、半ば寝ぼけ眼の赤葦の顔にメンドクセーって言葉が出てる。こいつほんと顔に出るよな。
顔は口ほどものを言う、これテストでるから。

「なんで!そんな!意地悪を!」
「うるせえ。」
「いうっ、…ごめんなさい。」

勢いが削がれた。くっそ何謝ってんだよ俺!
反射だよ俺!そういう風に躾けてきたのは?
赤葦だよ俺!

風呂上がったばっかの赤葦は髪が濡れていて、いつもより長めの風呂だったからか若干ほーっとしていて、えろかった。
だからこうして俺は赤葦と一夜を過ごす許可を乞うているのである。

しかし待て、立場的には俺のが上じゃん?
イントゥーベッドじゃ俺が上じゃんね?
なんで俺こんな正座してまで頼み込んでんの?
赤葦から誘いをかけてくれてもいくない?

「ねむい。」
「お前それ今言う言葉じゃないってわかってる?わかってるよな?」
「明日は休みなんだからさっさと寝させろ。」
「そこは明日休みだからいちゃいちゃできるねっだろ?」

そう言った瞬間、赤葦の眼が虚ろになった。
エッなにあかーしこわい。

「まだギャルゲーなんかしてんの?…どこ?」
「え、」
「どこしまってんだって聞いてんの。タンスの裏?ベッドの下?」
「そんな思春期学生の王道エリアに置くわけないだろ。てかお前、どうするつもりよ。」

それ見つけて、と言いかけたところで止めた。
赤葦が何言ってんのお前みたいな眼で睨んできたからである。
ほんとなに、さっきまで眠たげに眼ぇしぱしぱさせてたじゃん。えろかわいかったじゃん。

「折る、捨てる。」
「エッ。」
「最低、売る。」
「まじで?」

まじで、と返してきた赤葦の眼が割と真面目に怖くて戦慄した。

しかしだ、俺はPSPなどといったようなゲーム機は持っていない。カセットもだ。
けれども俺は赤葦ではない二次元の嫁とランデブーできる。そう、PCならね。

その余裕のせいか、少し安堵してしまった俺。
それを見過ごすほど赤葦は優しくない。

俺から視線を外し、デスクの上に鎮座する俺の長年の相棒を見ると、地を這うような声を出した。

「あっちか。」

赤葦怖すぎ、浮気がばれた夫のやっちまった感なんて比じゃねぇよ。思春期学生が母親に近親相姦ネタのエロ本を見られた時並みだぜ。絶望した。

のそりとベッドから降りようとする赤葦の腕を引っ張って待ったをかける。

「うん待とう、俺がギャルゲーしてるわけないじゃん?赤葦いるんだし、」
「じゃあ画像フォルダ全部見せろ。」
「それは無理。」
「消す。」
「ちょ、待った待った待った、待とう?ね?さっきまでの議題はなんだった?今日赤葦と俺がにゃんにゃんするってことだったよね?」
「誰が自分以外に勃つような男とやるか。」

嫌悪に染まった眼で凄まれた。
いつもなら、ここでぷるぷる震えてハイスミマセンデシタって返事するんだけど、さ。
でも正直、最後の一言で色々吹っ飛んだよね。

「…あかあしー。」
「は、…はぁ?」

がっちり腕の上からホールドし、赤葦を股の間に引き寄せる。
するとまあ、元気な俺氏と赤葦のしなやかな腰がこんにちは。

「おっ、まえ!」
「いいだろ別に、お前に勃ってんだし。」
「そういう問題じゃない!」

ぼふりとベッドに横になると、ちょうど目の前に赤葦の湿った頭がきた。
シャンプーの香りが濃く香って、首筋の方に鼻を寄せていけば真っ赤な耳がよく見えた。

「く、そ…、」

腕から抜け出そうと強張っていた赤葦の身体から、力が一気に抜ける。

「、すきにしろ。」

ありがとーございまーす。
なんて意味を込めてつむじに唇をつけた。


「…おわったら、ギャルゲ、ぜんぶ処分な。」

お互い息があがってふうふう言ってる中で、こんなこと言えるのは赤葦くらいで、
それで、俄然ヤル気が出るのも、俺くらいだと思っている。

そして切実に、終わる頃には忘れてほしい。



20150507


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