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夜久は世話焼きだ。
それは誰に対しても同じこと。平等に。

だから男女関係なくクラスメイトは夜久の事を頼りにするし、下手すりゃ年齢さえ関係なく、先生後輩もあいつを好きになる。
あ、もちろんライクで。ラブもあるかもしれないけど、俺がライクしか認めない。

けれども、そんでもってそれがあいつの長所であって、ちっさくて可愛くて男前で世話焼きってもう天使かってレベルの夜久の一つなのであって。
そして、俺の悩める種でもあるのだ。

朝からバレー部の後輩くん達に大層可愛がられると二限目終了後古典のおじいちゃん先生に雑用を頼まれ、昼休みは食堂のおばちゃんからおかずを一品プレゼントされていた。
そして俺は知っている。やつがその後クラスの女子からお菓子を貰っていたことも。

「やっくんモテるよね。」
「お、なんだ僻みか?」

にやっと口の端を持ち上げて、小悪魔な微笑みを浮かべる夜久がかわいくって仕方ないけど、今ここで激情に駆られるまま行動すればエルボーは免れられないので耐える。
教室での度を過ぎたスキンシップは体罰が下されるというお約束なのだ。

「俺のが身長高くって、やっくんをお姫様抱っこ出来るくらい王子様感に溢れてるのに。」
「喧嘩なら絶賛高額買取だぞ。」
「ベッドの中でやっくんをエスコートしてる紳士は俺なのに。なんでだろうね。」
「…お前まじで何なの。」

極悪人みたいだった顔が、一瞬にして花も恥じらう恋する乙女に。
夜久をこんな風にできるのは俺だけなのに、なんで彼らは夜久を好きになるんだろうね。
不思議や不思議。

「俺が一番、夜久の事を知ってんのに。」
「う、ぬぼれんな!」
「ごめんじゃあ四番目くらいで。」
「一気に下がったな、その間に誰を入れたよ。」

そりゃ夜久自身と、夜久を育てたマミーパピー…あ、いや、夜久のお父さんよりは夜久の事知ってるかもしれない。
今思春期の娘と父親の図が頭に浮かんだのでそんな事を考えついた。偏見?知ってる。

つか俺のやっくんが親を無下にするわけないです。めっちゃ親孝行するめっちゃいい子です。
この前そのお父さんへの誕生日プレゼント選び手伝わされました。

話は戻って。
他の奴らが付け入る隙もないのよ。俺たちには。
そう、らぶらぶなの。死語だね。
イエスフォーエバーラブ。こっちかな。
うん、はっきり言って彼らにはさ。

「勝ち目ないよね。」
「誰に?誰が?」
「俺たちの愛に。」
「お前自分の中で会話が成立してたりしない?」

おい、と袖を引いてくるやっくんの顔はちょっとキレてるけどその行動が強烈ツボだったのでプラスマイナスゼロ。どころかプラス。

「衛輔ぇ。」

名前呼びは特別である。
やっくんは照れ屋さんだから、あんまり呼ぶと恥ずかしくって手が出ちゃうんだ!こわいね!

「…なんだよ。」
「今日、ウチおいでよ。」

袖を引く手をやんわり握って、むすりとして色付いた頬を見つめる。あ、これは大丈夫だ。
もうすぐ小さく承諾の返事が帰ってくる。

ゆっくり指先を絡め、ちょっと硬くてかさついた手のひらをなぞると、夜久はくすぐってぇ、とはにかんだ。めっちゃかわい、え。
うちのやっくんちょうかわいいんですけど。

あ、だからといってそこで見惚れてる君ー!
完全敗北だってことは知っといてね。



20150415
20150427


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