こちらの続き。
小一時間。部屋に来るなり木葉が俺に抱きついてから経った時間である。
こいつ俺より身長低いけど体格はそこそこだから重いし、なんだかあつい。
木葉が熱いのか部屋が暑いのか、文字にすればわかる違いなのだが、頭が働かなくてもう、ね。
自分でも何言ってるかイマイチわかってない。
「木葉。」
「ん。」
「あちぃ。」
「は、さみいぐらいだろ。」
腕に一層力がこもって、首元にブリーチしたような色素の薄い髪が乗る。
正直に言おう。
俺の部屋は暖房をつけていない。よってあついということは、あり得ない。
そう、ただ俺が木葉のデレに困惑しているだけなのである。
ベットに押し付けて告白して成功させたはいいものの、これからのことに必要となるゴーサインが出なかったために前回はお互いに軽くちゅっちゅしただけで終わった。
そしてそれから何度かデートして、やっとお家デートに誘った結果がこれである。
俺のエンジンにブレーキはきかねぇぜ!ぶるんぶるんっとまあ俺のおシモ事情はさておいて。
木葉の硬めの髪の毛を撫でるように梳きながら俺は平常心を保とうとするのに必死である。
なむあみだぶつはんにゃはらみた…え?違う?
とにかく、俺はがっついて可愛い恋人に引かれるのだけは避けたいのである。くっそ可愛いけど。
木葉くっそ可愛いけど。
「…ちゅーしていーか。」
だがしかしこのまま何もしないのはただの生殺しにしかならんのでキッスをせがんでみた。
「いっ、…イーケド。」
一瞬身構えながらも、すぐに身体を委ねてくるさまはなんとも俺を煽ること煽ること。
何を?野暮だな聞くんじゃねーや!
おそるおそると、僅かに眼を開けて俺を見る木葉は耳たぶまで赤くしながらキス待ち顔で待機している。
あ、コレ超眼福。なんかエロい、やらしい。
写メりてーなぁと思いつつ、そんなことすればしばらく顔も見てくれなくなるだろうからやめておいて、柔らかい口元に顔を寄せた。
当てて、離して、また押し当てて。
それを何度か繰り返す。いわゆるバードキスってやつだな。
のうこうなの?チョットナニイッテルカワカリマセンネ。
ほら、俺と木葉は純真な愛を囁きあってるだけだから、正統派カポーってやつだから。
「…名前。」
「んん?」
「も、ちょい…。」
「あ?」
木葉の眉がきゅっと寄る。
ほんのりほっぺたを赤くしたやつは、唇を尖らせるとぼそぼそと何かをつぶやいた。
聞き取れない。もういっかい。
「っお前まじでサイアク!」
「えええ?!」
そんな理不尽な。お前がはっきり喋れよ!
なんて言えるはずもなく、クッションに顔を埋めてじたばたと暴れている木葉を見守る事しかできない。
とりあえず謝っとこ。
「ご、ごめんて。」
「ウッセー!」
あ、これだめだわ。こりゃどうするかなあと木葉のご機嫌をとる方法をかんがえていると、ふと大人しくなったやつの金髪から覗く赤い耳が見えた。むらむらっときた。俺って単純。
「もー…まじ俺のあほ…。」
ちょっと、いやかなりきゅんときて、そのまま木葉に覆い被さった。あー、こいつあったけ。
「っなん、なんだよ…。」
「なんも?」
「うわ、ちょ、バカ。」
唇の先で耳朶を食めば、木葉はくすぐったそうに身を捩って笑ってみせた。
調子に乗って、べろりと舌でそれを舐めてやると、奴の体がびくりと大きく震える。
強張った腰を撫でて、シャツの中へ忍び込む。
「お、おーい。」
「うん?」
「え、いや。ちょっと。」
へその周りをくるりと撫でれば、そこは意外とすべすべと触り心地が良かった。
「…お前体毛薄い?」
「ぶん殴るぞお前。」
「怒るなよー。」
そのまま木葉の身体をまさぐりながら、二人してずっと、笑ってた。
木葉もふざけてこっちに手を入れてきた。
ほかほかとした身体とは裏腹に、ひやっとした手のひらが腹筋に置かれた時、すげえぞくっとしたけど。
いやらしい意味もなく、悪戯っぽい笑みを浮かべる木葉への愛しいなって気持ちのが強かったから、俺の頭ん中は超プラトニックなんだと思う。
チクショウあいしてるよ木葉。
20150413
20150427