こちらの続き。
元気メーターは100ぱーせんとを振り切って、先日の風邪はなかった事のように俺は全快である。
そうして今日は、待ちに待った、赤葦とのおデイトなのだ。今なら空飛べる気がする。
待ち合わせた時刻は5分前。
ちょっと不機嫌そうにケータイを弄る赤葦の元へ半ばスキップで近寄る。
「やあごめん、待った?」
「遠目から写メ撮ってた不審者が。」
「いやだって、俺のこと待ってて寒そうにしてる赤葦がかわいすぎて。」
ごめん仲直りしよとハグしようと腕を広げれば勢いよく後ずさられた。かなしい。
「馬鹿だろ。気付かねぇと思ったの。」
「ぐへへ実を言うと赤葦の家からずっと付いてきてた。」
「、きもい。」
「嘘だよ。影からこそこそするのは俺の性に合わないからね。」
それでも疑わしげに、そして心底軽蔑したような眼に安心にも似た喜びを感じる。
ああ、やっぱり赤葦はこうでないと。
先日の優しくって甘々な赤葦もいいけど、やっぱりいつも通りがちょうどいい。
俺みたいなのには少々キツくて、たまに甘くしてくれるくらいがちょうどいい。
「さぁてどこに行くんだっけ?」
隣に並んで浮かれた声でそう尋ねてみると、赤葦はなんでもないような顔で某大型スポーツショップの名前を告げた。
ちょっとフリーズ。こいつ、今なんて?
「、赤葦。」
「なんだよ。」
「俺の記憶が正しければ今日はこの前のリベンジデートだったはず。」
「そうだな。」
「では何故?そんな場所でデートすんの?」
お揃いのタオルでも買っちゃう?と半ばヤケクソ気味に言う。
なぜだ、なぜそんな色気ない場所なの。
きっと俺の表情と雰囲気は重く沈み込んでいることだろう。
誰だ今日空飛べそうとか言ったの。俺だ。
「部活の買い出しなんだけど。」
そのお前何言ってんのみたいな眼やめてくれないかな、ただでさえ俺のピュアでソフトなハートはすでにズタボロなのに。
一緒にランチ食べたらどっかぶらぶららぶらぶして、その後俺の家に雪崩れ込んでそんでほにゃららする今日のデートプランが。
今一瞬にして消え去った。泣きたい。
「ひどい。この前のデート風邪ひいてぱぁにしちゃったからってそれはナイ。」
しくしくしくと泣く素振りをしても赤葦は一瞥もくれずに足を進めるだけ。
ちょっとムカついて、コートのポケットの中にしまい込まれた手を引き抜くように腕を引いてやると、赤葦は呆れたような視線を投げてよこした。
それから、
「買い出し終わったら、俺ん家。」
それでいいだろ、と少し拗ねたように言い捨てて前へ向き直った。
止まった歩みが再開される。
俺はさほど鈍い人間ではないからその言葉の意味はしっかりと理解しているし、
癖毛の隙間から覗く耳が赤らんで見えるのも気のせいじゃないと信じている。
「…赤葦。」
「なんだよ。」
「コンビニ寄っていい?」
「、すきにしろ。」
早足にすったかすったか歩いていく赤葦の半歩後ろをキープしながら声をかける。
ああやばい。俺すげぇにやにやしてる。絶対。
「赤葦、」
「なに。」
「すき。ちゅーしたい。」
「…家でな。」
ああもう赤葦ってなんでこんなかっこよくてかわいんだろう。
はやくはやく、買い出しおわれ。
20150317
20150427