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もむもむとほっぺたと唇を動かして、ちょっと幸せそうに最近お気に入りのグミを食べるヤツが、ものすごく可愛いものに見える。

男だけど。

休み時間に満面の笑みで俺のところにきて、
「苗字、ちょーだい。」って主語もなしで言ってくる二口の無垢さが超絶かわいいと思う。

俺とほぼほぼ身長かわんねぇけど。

そんでもって、

「なに、欲しいの?」
「んー?うん。」
「だめ、あーげない。」
「それ俺のなんだけどね。」

このっ…カップルみたいな…会話…!
青春してるって感じする。まさに男子高校生って感じ。

そう感じる原因が、まあ大方、伊達工に女子が少ねえからってのもある。

狙ってんのか無自覚なのか、恐らく前者であろうが。
事実俺はヤツに、ほだされてしまったのである。

ワガママ彼女みたいな二口ほんとにかわいいんだよ。ちくしょう。

そんな想いをへらへらした笑顔で包み隠して、グミのパッケージをちらりと見る。
二口のために家に買い溜めしてるなんて口が裂けてもいえねーなぁ、と思いつつ。

二口は、ん?と小首を傾げた。

「苗字の財布は俺のでしょ?」

なんてさも不思議そうな眼をして言った。
ワイフはサイフってね、わかります。

「うわあジャイアン。」
「だぁって事実じゃーん。」

けらけら笑う二口はレモン味のグミをまた頬張る。
恋の味なら俺が味あわせてあげちゃうよだなんてしんでもいえねぇ。

「あ、二口がまた苗字に貢いでもらってる。」

うらやましーの、と茶化してきたクラスメイトに、楽しくなって乗っかった。

「そーなんですー、二口のせいで俺ジリ貧。」
「やだー、二口ジャイアーン。」

俺も欲しいよー、なんて言って手を伸ばすと、二口の眉間にきゅっとシワがよる。

不機嫌な顔もかわいいなんて、二口ってすごい。

変なところで感心していると、引っ込めかけた手の平を掴まれて、

「え、」

がぶりと、

「は?」

噛まれた。

「いってえ!」

皮膚の上をにゅるにゅると生温かい何かが這いまわり、吸われる。

ぞわぞわと肌が粟立って、背筋が伸びた。

二口がにんまりと満足げに笑う。あ、かわいい。

口が離されたそこは、唾液でてらてらと光っていて、外気にさらされて急に冷たくなった。

「名前は、俺のだし。」

パニック状態の脳みそって、案外都合のいいように言葉を聞き取ってくれるらしい。



20150312


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