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こちらの続き。

※事後描写あり

「はっぴーばれんたいーん!チョコレートなんて代わり映えしないものより苗字は及川さん貰った方がうれしいよねっ!
ということで及川さんが直々にプレゼントになっちゃいます!」

正直、ネタにされるかバカにされるかのどっちかだと思ってたから、ちゃんとチョコレート用意してきてたんだけど。
チョコレートより先に俺の大切なものを苗字に食べられるとは思いもしなくって今、あの時普通にチョコレート渡さなかった自分を呪っている。

「苗字…ねえ。」

自分の喉から出たのは少し掠れた声で、昨日の自分の醜態が思いかえされる。
それがとても恥ずかしくて、口をまごつかせていると、苗字の手が俺のほっぺたから鎖骨にかけてをそっと撫でた。

ぞわぞわする。それも嫌なやつじゃなくて、なんか。でも確かにそれじゃないんだけど。
苗字に流されてしまいそうな。

「なに。」

中々本題に入らない俺に焦れたのか、苗字はぐっと顔を寄せてきた。
顔が見れなくて視線を移動させるも、そこかしこに現れるシーツの色。
段々と鮮明になる昨日の記憶の羞恥を、俺は唇を噛み締めて耐えるしかなかった。なんでこんなはずかしいの。

「あ、あの、ちょっと、はなしてほしい。」
「便所?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど。」

じゃあいいじゃん、と肌に直接苗字の腕から指やらが当たって、抱きしめてくる。
なんで、いっつもこんなことしてくれないくせに。

ひくりと腰が震える。ちょっと痛い。

「、腰痛い?」
「ん、だいじょ、ぶ。」
「…ごめんな。」

腰をさすってくれる手に、困惑が羞恥を勝る。
なんなの、なんでそんなに優しいの。冷たい苗字はどこにいっちゃったの。
いやでもこの優しい苗字はこれでいいんだけど…けど、まやかしかもしれない。

「徹。」
「えっ。」
「…なんだよ。」
「ううんなんでもない。」

苗字の眉間に皺が寄ったからなんでもないなんて言っちゃったけど、全然何でもある。日本語おかしい。
でも苗字もおかしい。俺のこと、とおる、なんて言わないし、あんな優しく呼んでくれないし。

ああ、頭パンクしそう。顔も苗字が触ってるとこも熱くて熱くて、どうしようもない。

「…お前のそういう反応見ると嬉しくなるくらいには、俺、お前のこと好きだよ。」

そうやって、ちゅーすると見せかけて嘘だよってゲス顔で笑うんでしょ。
及川さんはわかってますからねってあれ、ちょ、ちょっと、苗字、え?

待って、落ち着いて待って。近いってえ、うそしちゃうの?ちゅーしちゃうの?

ゆるりと腰に置かれた手が動く。
一度触れ合ったはずの唇が、何度も何度も、おでこや瞼や、ほっぺたや首筋やら、いろんな所に触れてくる。なになになに、どうしたの。

わあああ待って待ってお尻触んないでちゅーもそんなにしなくていいから。
ねえ、なんで俺に覆い被さってきてんの。なんでそんな眼で見るの。どきどきしちゃうからやめてよ。

「徹は、バカでかわいいなあ。」

俺って王道大好きなんだぜ知ってた?なんていう唇に言葉は塞がれてた。
実は知ってたよなんて言ってしたり顔で笑ってやりたかったけど、
きっとそんなことしたら、大変なことになるってわかってるから言わないことにしておきます。



20150215
20150304


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