女主 | ナノ

※付き合ってる


いきなりごめん、今日会える?なんて恋人からのLINEを見たのは、正午を過ぎるちょっと前。
因みに起きたのはその数十分前だったりする。
だって今日は家族も予定もない日曜日なんですもの。
まあそれにしても寝過ぎたか、身体がどうにも重たい。

朝ごはんにしては遅く、昼ごはんにしては早い食事を取りながらLINEが送られてきた時間を見ると、6時を少し過ぎた頃だった。
完全寝てるわ、てか超非常識な時間じゃんこれ。サイレントにしててよかった。

なんて思いつつ私は既読をつけたまま、指先をうろうろとキーボードの上でさ迷わせていた。
この時間のLINEということは、彼は今日部活ということ。
けれどあと一時間もしたらそれは終わるわけで、返信するまでの猶予はそれだけしかない。

部活がある日に会うことがないってわけじゃないけど、それにしても珍しい。

散々頭を悩ませた挙句、何かあったのかなんて聞く勇気も度胸もない私は結局、今日外に出られる格好してない、というなんとも可愛くない返信を返したのだった。


ピコン、と鳴った電子音に振り向いて、内容を確認する。

「…えー、」

部活終わった。じゃあ家ならいい?というそれに、もう無視してしまおうかな、なんて思い始めた瞬間またLINEが届いた。

今から家行く。

至極シンプルなそれに、私は恐れ慄きながらお待ちしてますと返す以外の術を知らなかった。
ほんとにどうしたんだろう赤葦ちょうこわい。


「なあ、」
「はい?」
「こっち見ないの、なんで?」
「、特に意味はございません。」

そう答えると、それっきり黙り込んでしまった赤葦氏。なんだか突き刺さるような視線をつむじに感じる。はげそう。
そして私の精神的ダメージは半端じゃない。やばいこわい。

唐突だけど、人間の心音というのは一生のうち回数が決まっているらしい。
なので私の寿命は、赤葦によって減らされているのである。
因みにこのどきどきはときめきとは違う感じのどきどきである。

LINE通り、10分後うちのインターホンを鳴らした赤葦を、私はそのまま私室に迎え入れた。
なんとなく雰囲気が暗い彼に気付いた私は、触らぬ神に祟りなしというように黙って本でも読もうとした。結果がこれである。

背中から抱き込まれて、赤葦の体育座りした足の間にすっぽりと収まった私は、訳も分からずただひたすら無心に文字の羅列を追うだけだった。
内容はほとんど入ってきていない。

「こっち向いたら。」
「遠慮します。」
「は?なんで。てかその敬語も何。」
「気にしないで。うん、流行りなの。」

すると腹部に回った腕がそこを締め付けて、頭から背中に掛けて重く何かが押しかかってくる。何かといっても赤葦しかいないわけだが。
前後から圧をかけられて、体制が段々窮屈なものになってきた。つぶれそう。

それに伴って、すーっとした制汗剤の香りと僅かに混じった汗の匂いが強くなる。
正直なところ、私の心臓は情けないくらいに暴れている。
因みにこれはさっきとは違う方のどきどきだ。信じたくはないが、ときめいている。キャラじゃない。

全くこんなにも人の心臓事情を乱すなんて、憎いね赤葦。
某電気メーカーのCMに出ている女優を真似てみる。
あんまり似てなかったかもしれない。

「今日、親は?」
「どっちも仕事ですけど。」
「…へー。」

ちょっと、お腹をさするのやめてもらえませんかね。
あとつむじに柔らかいもの何回も押し当てるのも、よしてほしい、です。

「やめて、あーかーあーしー。ちょっと。」
「むり。」
「むりくない君ならできる、余裕だと思う。」
「それしょぼくれモードの主将に言って欲しい。」

手の動きが止まる。もう動かせないように自分の手で握って拘束してから、赤葦に向き直る。
目がほんの少し据わっていて、なんだか暗いっていうより、疲れてるってほうがしっくりくるような気がした。

そんな姿に絆されて、私は仕方ないなって思ってお疲れ様モードに切り替える。
でも腕の拘束は解きません。

「木兎さんだっけ?」
「そう。…で、何この手。」
「、ちょっと。」

するりと腕が解かれる。あ、拘束した意味なかった。

「じゃま。」
「こんのっ…ば、」

ばっかやろう、って言おうと思ったのに、その前に目瞑って口元に柔らかいもの当ててくるから何も言えなくなった。
この大馬鹿者め、デレが唐突すぎて対処の仕方に困るわアホ。




20150202


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