CLAP THANKS
れんあいゆうぎ05
「ところで先生、腹減んねぇ?」
右手を腹に当ててさすりながらもう片方の手でカカシの服をクイクイと引っ張り、情けない声を出すナルト。
「あぁ。もうそんな時間?じゃあ何か食べに行こうか。」
なんだ、いつものナルトじゃないか。もうペコペコだってばよー!と嘆く姿は一楽のラーメンを強請る姿を思い出させる。当然いつもの様に一楽!と喜ぶナルトを想像していたカカシだったのだが「外食は勿体無いってばよ。オレが作るから先生は座って待ってて!」と、予想だにしなかった言葉が返ってきたうえにカカシそっちのけで武器が入っていると言っていた荷物をあさりはじめた。
「ねぇ、だからなんなの?ソレ。」
ガチャガチャと金属音がぶつかるような音をたてながら荷物をあさるナルトに、思わず問うカカシ。
「だーかーら、オレの勝負道具だってば!」
お得意のイタズラっぽい笑みを浮かべて、答えになっていない言葉を返すとそれらを抱えキッチンへと消えていった。
リビングに一人放置されたカカシは勝負道具とやらが気になりつつもとりあえず言いつけ通りソファーに腰を下ろし愛読書を手にとった。少しの期待をする事もなく愛読書に目を通していると、トントントントンとリズム良く落ちる包丁の音にグツグツと煮立つ鍋の音が静かなリビングに響き渡り始めた。聞こえてくるはずもない音に耳を疑っているところに今度は、カカシの大好物であるサンマの焼ける良い匂いが嗅覚を刺激した。
すぐさまパタンと本を閉じ、目の前のテーブルに置くとカカシは跳ねるように腰をあげ食欲をそそる音と匂いに誘われるがままキッチンへと足を運んだ。座って待ってて、と言われた手前、気配を振りまいて近づくわけにもいかず任務でもないのに気配を完璧に消してひょこっと顔を出し、キッチンの中を覗く。
中では持参したらしいオレンジ色のエプロンを着用したナルトがさほど広くないキッチンをせわしなく駆け回っている。次々と皿に盛り付けられていく料理達は偶然にもカカシの好物ばかりで、どれも美味しそう。
鼻歌を歌いながら手際よく調理するナルトは普段の悪戯好きなナルトでも任務や修行に勤しむ努力家のナルトでもなく。こんな風に自分だけの為に料理してくれる人が居たらな、そう思わずにはいられない程の男心をくすぐるその姿にカカシはまた、いとも簡単に心動かされるのだった。
自分がこれほどギャップに弱いなんて知らなかった。っていうか知りたくなかった。