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れんあいゆうぎ08

食事を済ませたあと。

ナルトは「自分が片付けをするから先生は風呂洗ってきて」と有無を言わせぬ口調で言った。本当はソファーで寛いで愛読書を読みたかったがソレを我慢して素直に風呂場へ向かう。あそこで拒否してみたところでどのみち風呂掃除をしなきゃいけないのはわかってるから。

というか。

食事の手伝いをしてるときから思っていたんだが。なんだかオレ、尻にしかれた夫みたいじゃないか。いつもはオレが子供たちを仕切ってるのに。指示を出す側なのに。なのにどういうわけだか、ナルトにアレコレ言いつけられて。これじゃあ、いつもと立場が反対だ。だけどもナルトだってせかせか家事を済ませているし、文句なんて言えるわけもない。結局。不本意だが従わざるおえないのだ。

「ナルトー、お風呂洗い終わったよ。いま、お湯ためてるから。」

「ありがとってば。」

未だキッチンで何やらゴソゴソしているナルト。

「何してるの?」

「んー、糠床まぜてんの。」

はて。うちに糠床なんてあったっけ?いや、ないない。漬け物なんて漬けたこともないし。

「もしかしてソレも持ってきたの?」

「おー。さっき食べたろ?茄子の漬け物。」

いや、食べたけど。え、なに、アレ、ナルトが漬けたの?てっきり買ってきたんだとばかり思ってた。

「オマエ、漬け物まで作ってんの?」

「うん。だって自分で漬けた方が安くすむし、うまいし。うまかったろ?」

「うん、物凄く。」

ほんとに美味しくて、あとでどこの店で買ったのか聞こうと思ってたほどに。

「だろー?コレだとオレ、野菜食えんの。ホラ。誰かさんがオレの大っ嫌いな野菜をしょっちゅう差し入れしてくるもんだから?捨てんのもったいねぇし、でも野菜嫌いだし、何かいい方法ねぇか考えてたらイルカ先生がコレなら食べやすいぞって言うからさ。」

またイルカ先生=Bコイツの中にはイルカさんしか居ないのか。いや、あの人はコイツにとって特別なのはわかってる。だけど…

(少しくらい、オレが居たっていいんじゃないの。)

ってなに考えてんだ。さっきからオレ変じゃない?

「最初はありがた迷惑ってやつだったけどさ。今では野菜食えるようになったし、あ、でもできれば食いたくねぇよ?うん、でも。オレの食生活まで心配してくれた先生のおかげだってば。ありがとな!」

「…いや、そんなの別に、」

なんなんだ。なんで。ナルトの言動で一喜一憂してるオレ。さっきまでイルカ先生と発していた口が自分の名前に変わっただけで嬉しくなって。

よくわからない勝負をもちかけられてからまだ1日も経っていないのに、これじゃあまるで。

「先生、ホラ。コレも食ってみ?」

食卓には並ばなかったキュウリ。

ナルトは軽く水ですすいで糠を落とすとオレの口へと差し出した。

「はい、あーん。」



(オレ、降参かもしんない…、)
 
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