優しさが欲しいなあと
呟いてみなさい



「……あ」


収録終わり。
いつものように帰りの支度を終わらせ、ロビーのドアを開けると神谷さんがいた。

そう言えば、先に出てったなぁ……。


「神谷さーんっ」

「……げ、小野くん」


頭の上で手を降って相手の名を呼べば、神谷さんは心底嫌そうな顔をした。

……そんなに露骨に嫌がらなくても……。
仮にも俺等恋人同士なのに……。


「何しに来たの?」

「何って……。神谷さんの姿が見えたので」


笑顔でそう答えれば、神谷さんの目が鋭く此方を睨んだ。


「小野くん、気持ち悪い」


きた!
恒例の女王様の罵り……っ!


「そう言わないで下さいよー……」

「だって本当のことだし」


俺のことはお構い無しに、そのまま歩き出そうとする神谷さん。
俺は咄嗟に声を掛けてその動きを止めた。


「なに?」

「……あ、えっと……」

「なに? 用がないんなら早く帰りたいんだけど」


そう言い、再び歩き出そうとする。


「神谷さん、俺……神谷さんの優しさが欲しいです」

「……は?」


俺が唐突にそう告げれば、神谷さんは腑抜けた声をあげた。
そして振り向くと、ゆっくりに此方に歩み寄って来た。


「……神谷さん?」

「…………小野くん」


いつもと違う少し低めの声で俺を呼ぶ神谷さんに驚いていると、その本人は一旦言葉を切ってから俺を見上げて言い放った。


「寝言は寝て言え」


……この時の表情と声が、今世紀最大級の怖さを持っていたことを俺は確信してます。




笑顔が最凶
(うぅっ、神谷さんの意地悪……)(小野くんの気持ち悪)


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