何をされても
笑顔で耐えなさい



「小野くん」


スタジオに入った途端、神谷さんに声を掛けられた。
視線をそちらへと向ければ、俺を呼んだ本人は雑誌を読みふけっていた。


「おはようございます。何かありましたか?」

「んー……」


相変わらず視線は雑誌のままで、神谷さんは生返事を返す。

可愛いなぁ……。


「可愛いとか言うな」


目の前の神谷さんに思わず見とれていたら、それを見透かしたようにギロリと睨まれた。

え、読心術……?


「小野くんさぁ、最近益々気持ち悪くなってるよ」

「えー、そうですかぁ?」

「気持ち悪い」


気持ち悪い言われるのは毎日のことだけど……なんか今日は一段とキツイ……。

俺がちょっと落ち込んでいれば、それを知ってか知らずか、神谷さんはまたドSな発言をする。


「あ、思い出した。小野くんさぁ、3回回ってワンって言って」

「……はい?」

「ほら、よく犬の芸であるじゃん。3回クルッって回ってワンってやつ」


ちょっと待て。何そのお願い。てか命令? 命令だよね、絶対。だよね。そうだよね。あの目は絶対、女王様の目ーーっ!


「小野くん、早く」

「あ、はい」


少ない頭脳をフル回転させていると、神谷さんの声で現実に引き戻される。

…………仕方ない。


「……っ、ワン!」


女王様のお望み通り、3回回ってワンと言いました。
そりゃもう、華麗なターンで。

すると神谷さんは少し垂れ目な瞳を丸くして驚いたように此方を見ていた。


「……本当にやるんだ。凄いな、お前」


そう言うと再び視線を雑誌へと戻す。

……え、あれ、滑った?


パチパチと速めに瞬きをしていると、監督の声がして不思議な命令は幕を閉じた。


……かと思われたが、女王様のおかしな命令は、俺を度々苦しめるようになるのだった。




女王様のご命令
(小野くん、どうかしたの?)(ちょっと肉体と精神を痛めました……)


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