only you


「さとーくん!」


誰もいない休憩室の椅子に座り、いつもの如く煙草に火を点けようとライターを出したと同時、相馬の声がする。
ゆっくりとそちらに視線を向ければ、それはやはり相馬で。
少し不機嫌そうな顔でこちらに歩み寄って来る。


「佐藤くん!」

「……なんだよ」


先程から名前しか呼ばれていない。
だが相馬の表情は眉がつり上がっていて、いかにも怒っているとでも言うようだ。
まぁ、俺には可愛くしか見えないが。


「佐藤くん……さっきさ、女の人と電話してた……?」


……突然何を言い出すんだろうか。
先程まで怒っていたかと思えば、眉を垂らしてしゅんとした顔になる。忙しい奴だ。
思わず固まってしまったが、そんなことしてないし、するつもりもない。


「なんでそんなこと訊くんだよ」

「だって……」


言葉の先が萎む。
そしてそれきり口を開かなくなった相馬は、何をすることもなく俺の向かい側の椅子に座った。

てか電話って……あ、もしかして……。


「言っておくが相馬、あの電話は大学の奴からだから」

「……え、」


俺が独り言のように呟けば、相馬は反応するように顔を上げた。
そして俺を凝視する。


「しかも、男。女じゃない」


そう、女じゃない。
大学の授業でわからないところや書ききれなかったところを写させてもらう為、友人に電話していただけ。
しかもそいつは女みたいに声が高く、自分でもコンプレックスなのだと話していた。
だから勘違いするのも無理はない。


「……本当に?」

「嘘吐く理由ないだろ」


全てを話せば、いつもは細く閉じられている目を見開いて俺を見つめる。
俺はここで逸らしたら嘘だと思うだろうと、見つめ返した。
数秒すると相馬の瞳からゆっくり水滴が流れ落ちる。


「あ、あれ……?」


自分の目から流れてくるものに戸惑いを隠せない相馬は、おろおろと自らの目を拭う。
でもそれは次々と溢れ出してきて。


「な、なんで……っ?」


ごしごしと目を擦る。
こら、そんなに擦ったら明日腫れるだろ。

俺は若干呆れつつ目の前で涙を流している、愛しい愛しい恋人を抱き締めた。


「さ、とーく……?」

「大丈夫」


大丈夫。
そう優しく語り掛けながら海のように蒼い髪を持つ、頭を撫でる。
すると段々相手の力は抜けていき、やがて体重を俺に預けるまでになった。


「……相馬」


名前を呼べば、ゆっくりと顔を上げる。
目が合うと、それはそれは綺麗とは呼べない表情だった。
でもそれが愛しく思えて。

お互い何も言わず、ただただ唇を合わせた。


誓いのキス
(君が、君だけが)


タイトル訳:あなただけ
本当に合ってるかは調べないでね☆


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瑞乃様リク、「甘くて馬鹿な佐相」でした!
「馬鹿な」の馬鹿は佐藤くんは相馬馬鹿ってことで。
ちょっと相馬の嫉妬を入れてみましたが……きちんと表現されてないですね、すみません。
と言うか、休憩室で何してんだって話しですよね。
この後小鳥遊くんが現場を見てしまい砂を吐いたのはまた別の話し……。

リクエストありがとうございました!
こんなので良ければお納めくだしあ!
リテイク受付中ェ……。


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