懐かしい

+累視点


みのりと離れてから、僕の心にはぽっかりと穴が空いたようだった


それも、そのうち忘れるようになって…


あれから、僕は沢山人を殺した


そのうち、あの方から下弦の伍の称号も貰った


それから、"家族"も作った


恐怖の絆を繋いで、ね


それでも、胸にぽっかりと空いた穴は埋まらなかった


それを忘れるように、僕は人を殺した


僕が彼女のことを忘れたころ…









『はぁっ…はぁっ…はぁっ…』


人間の女が、この山、那田蜘蛛山にやって来た


「…ふーん。人間の女か…」


僕はただその女を見つめていた


すると…


「…っ!」


"累っ!"


「…っ、誰だ…?」


不意に誰かの顔が頭にちらついて、頭を押さえる


人間の女がいたところに目をやると、女は怪我をしたらしい


転んでいた


「…ふうん」


すう…っと目を細めた


なんだかその女が他の人間の女と違って見えて、その女の前に降り立つ


「…ねえ。キミ、こんなところで何してるの?」


『!?…あ…』


女は僕を見て驚いた表情をする


『…るい…』


彼女の口が、僕の名前を紡いだ


「?なに、僕のこと知ってるの?」


『え…?私のこと覚えてないの?』


「覚えてないもないもなにも、僕達初対面でしょ」


『…っ!』


彼女がショックを受けた顔をする


それに、なんだか胸が傷んだ


何故…?


「…ふふ、面白い。いいよ、キミは殺さないであげる」


僕がそう言うと、彼女はキョトンとした顔をした


なんだか懐かしい気がした








懐かしい

(なんだかそんな気がした)

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