十一話


とある日、蝶屋敷には、珍しいお客様が来ていた


「…あ!みのりちゃん!」


『…え?蜜璃さま?』


洗濯物をかご一杯に持って歩いていると、名前を呼ばれる


そちらを向くと、柱の一人、恋柱の甘露寺蜜璃さまが、私を見つけて目を輝かせていた


「みのりちゃんっ!!」


『おひさしぶりです、蜜璃さー…』


言い終わる前に、蜜璃さまに後ろから抱きつかれる


「あーん、会いたかったわ!本当に久しぶりね〜!」


蜜璃さまは、ぎゅうぎゅうと私を強く抱き締める


でも、ちゃんと手加減はしてくれているのだろう


(初めてあったときは…本当に、中身が飛び出すかと思った…)


そんなことを思い出していると、ふと蜜璃さまが私を離した


「あ、そう!私、みのりちゃんに渡したいものがあって!」


蜜璃さまはそういうと、ごそごそと懐から何かを取り出した


「…はい、これ」


『これは…匂袋?』


蜜璃さまが私に差し出したのは、可愛らしい形をした匂袋だった


「そうなの!たまたま任務先で見つけてね?あなたにぴったりだと思って!つい買っちゃった」


蜜璃さまは、とても嬉しそうに笑う


『あ、ありがとうございます…でもこれ、高かったんじゃ…』


私が、本当に受け取って良いのか迷っていると、蜜璃さまは、また私をぎゅっと抱き締めた


「なに言ってるの!私があなたにあげたいと思って買ったんだもの、もらってもらえなきゃ悲しいわ」


そういって、少し眉を下げた蜜璃さまに、私は素直に受けとることにした


『…ありがとうございます、蜜璃さま。大事にしますね』


そう笑いかければ、蜜璃さまも嬉しそうに笑ってくれた








恋柱、甘露寺蜜璃からの贈り物

(それは、藤の花の香りの、匂袋) 




ーーー
主人公が、何処にいても鬼に襲われないように、と願いを込めて買った蜜璃ちゃん



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