十話


私がりんご飴を食べていると、冨岡様が私の手を小さく引いた


『…?』


(なんだろう…)



そう思いながら隣に立つ冨岡様を見上げると、こちらを見ていた冨岡様と目があった


「…いくぞ」


『え…?』


目を瞬く私の手を引いて、冨岡様は歩きだす


…軽く手を引いたのは、歩きだすことを知らせるためだったらしい


また、いつもと違ってゆっくりと歩く冨岡様と、冨岡様に手を引かれる私


…冨岡様もいつもと違って浴衣だし…


…もしかして、恋人同士とかにも見えたりするんだろうか…?


そんなことを考えていると、冨岡様が立ち止まった


『…冨岡様?どうかしましたか?』


私が声をかけて冨岡様の後ろから前を覗こうとすると、冨岡様が手を後ろに引いてそれを遮る


『…?』


私が首をかしげていると、冨岡様の表情が硬いことに気付いた


(…どうかしたんだろうか…)


はらはらと、だんだん心配になってくると、前の方から聞きなれた声が聞こえていた


「…おーい!冨岡さーん!!」


『…この声は…』


「…そろそろか」


まさか、炭治郎くん…?


私が確認するために覗き込むよりも早く、冨岡様は私を抱き上げて瞬時に移動した


次に私が目を開けたときには、もうそこは蝶屋敷の庭だった


「…あら、お帰りなさい。早かったですね」


たまたま庭に来たのか、しのぶさまがこちらへと歩いてくる


「…。」


冨岡様が何が言いたげな目でしのぶさまを見ているが、しのぶさまは何処吹く風だった


「さ、みのりさんを離してください」


「…(はぁ)」


冨岡様は小さく息をはくと、私を庭に降ろした


「…またくる」


『あ、冨岡さー…』


私が名前を呼ぶよりも早く、冨岡様は移動してしまった


(…お礼、いいたかったのにな…)


小さく息を着くと、しのぶさまが私の顔を覗き込む


「…もしかして、邪魔をしてしまいましたか?」


『あ、いえ…お礼、言えなかったなと思って』


「ふふ、なら、代わりに私が言っておきますよ」


『本当ですか?ありがとうございます』


「いえいえ。…さ、いくら夏場とはいえ、外に長居するのは良くないですよ。戻りましょう」


『はい、しのぶさま』


私は今度はしのぶさまに手を引かれ、屋敷の中へと戻ったのだったー…







夏祭り

(そういえば、あの時聞こえた、炭治郎くんの声はなんだったんだろう…?)



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