八話


+夏の時期


ある日の午前中、朝食を食べ終わり、片付けも終わった頃


私が庭で箒掃除をしていると、唐突に水柱の冨岡様が来た


『…あれ、冨岡様?』


「あぁ」


すたすたとこちらに歩いてくる彼は、何時も着ている隊服ではなく、着物を着ていて、私の方に歩いてくると、私の目の前で止まり、言った


「…。夏祭りに行くぞ」


『…、え、…?』










あまりに突然過ぎて鳩が豆鉄砲食らったような顔をして、きょとんとした顔をしてしまったけれど、冨岡様は私から箒を奪うと、箒を近くにいたアオイちゃんに預けた

次に私を俵担ぎにし、一瞬で姿を消したかと思うと、素早く走りだし、気が着いたらしのぶさまのところにいた


「あら、冨岡さん。わたしのみのりさんを連れてどうしたんです?」


しのぶさまは椅子をくるりと回転させ、こちらを見ると笑顔を見せて私たちを見た


しのぶさまの問いかけに、冨岡さんは沈黙のあと静かに答え 


「…お前のではない」


「あら、冨岡さんのでもないですよね?」


「…お前のではない」


「…聞いてます?冨岡さんのものでも無いですよ?」



そんな軽い問答を繰り返すと、冨岡様はやっと私を下ろし、しのぶさまに言った


「…こいつに着物を見繕ってくれ」


「あら、どちらへ?」


「……」


「…ふふ、仕方ないですね。わかりました、とっても可愛くしますから、安心して待っていてください。…さ、行きますよ、みのりさん」


しのぶさまは何かを察したのか観念したように苦笑するとそう言い、私の背中をぽんと叩き、二人で奥の部屋へと向かったのだった







「ほら、とっても素敵ですよ」


『わぁぁ…!』


その後、しのぶさまにいろいろ着物や小物を見繕ってもらい、私はそれを身につけることとなった


「ふふ、これで冨岡さんもいちころですね」


『い、いちころって…』


「ふふ、とっても似合ってますから、自信もって大丈夫ですよ」


そうしのぶさまに微笑まれ、私も仄かに自信が持てた


『ありがとうございます!』


「さ、冨岡さんも待っているでしょうし、いってらっしゃい」


『は、はい!行ってきます!』







お姫様になるために

(準備は確り致しましょう?)



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