たまには悪くない/義勇


それから、冨岡さんは任務に行く度にお土産を持ってきてくれるようになった


風車や風鈴、着物を買ってきてくれたこともあった


今まで家から出たことの無かった私には、どれもが珍しくて素敵なお土産だった


そのすべては私の部屋宝物になっていった


私の宝物は増えるばかりで、私は冨岡さんにお返しができているのか不安だった


そうそう、この間冨岡さんが喋る烏を連れてきてくれた


"この烏が自分の帰りを伝えてくれるから"と


その日から、その烏(鎹烏と言うらしい)が冨岡さんの帰りを教えてくれるようになった


「義勇、カエル!義勇、カエル!」


『あ、冨岡さん帰ってきたんだ』


私は冨岡さんを出迎えるために玄関に向かう


「…ただいま戻った」


『おかえりなさい!冨岡さん!』


笑顔で冨岡さんを出迎える


…なんだか夫婦みたいだななんて思ってしまった


そんなのあり得ないのに


冨岡さんにはしのぶさんっていう美人な同期がいて、きっと冨岡さんの世界は私より広いんだ


私なんかを好きになるはずない


それは、事実だけど実に深く私の心を抉った


「…土産だ」


冨岡さんが私に近づいてきて私の髪を触る


『え…?』


髪を触られた感触がして


「…やはり似合うな」


そう言ういつもより饒舌な冨岡さん


『え…?』


なにが…?


玄関に設置されている鏡を覗き込むと、私の髪には一本の花が添えられていた


『これは…』


「すまない。今回は町に寄っている暇が無かったんだ」


そう言って微かに悲しそうに眉を下げる冨岡さん


『そんな、いいのに…』


…ん?じゃあこれはどうしたんだ?


「これは道端に咲いていた花を摘んだんだ」


『あ、なるほど…って、私、顔に出てます…?』


私がそう問いかけると、少しだけおかしそうに笑うのだった







たまには悪くない

(珍しいな、こんなに饒舌な冨岡さん)


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