07:藤の花
「それじゃあ俺はそろそろ行くよ」
『うん、わざわざ来てくれてありがとうね』
「いえいえ、俺が来たくて来ただけだから」
炭治郎くんは優しい微笑みを浮かべると籠を背負ってばあやさんに声をかけ、玄関を出ていった
「…ふふ、お嬢様、微笑みが溢れておいでですよ」
『え!?』
「無意識でしたのね」
ばあやさんが微笑ましそうに笑う
「良かったですわ、お嬢様に笑顔がお戻りになって」
『え…?』
「ふふ、起きてしばらくはずーっと難しい顔をしておいででしたから」
『…あはは』
そりゃそうよいきなりトリップなんてしたら…!
笑顔の裏でため息をつきながら、その日も1日布団のなかで過ごした
それからしばらくは、どうやら炭治郎くんが心配性らしく、毎日お見舞いに来てくれた
「おーい、今日も来たぞー」
『あ、ありがとう!』
どうやらばあやさんやほかの屋敷の人にも信頼されているらしく、屋敷の門番に声をかけて屋敷に入ってくる彼は、すぐに私の部屋へとやってくる
「ほら、今日は藤の花を持ってきたんだ」
『え、いいの?ありがとう!』
わざわざ炭治郎くんが山で花を摘んできてくれたらしく、藤の花が彼の手の中で揺れていた
『でも、今って時期じゃないよね?』
「狂い咲いていたから、少しだけ摘ませて貰ってきたんだ」
『え、いいの?』
「あぁ、きっと大丈夫だよ。ほら」
炭治郎くんが藤の花をそっと私の手に持たせてくれる
『ありがとう…。…綺麗…』
藤の花を見つめ、呟く
「だろう?」
炭治郎くんも嬉しそうに笑う
「…俺の住んでいる山には、とっても見晴らしのいい場所があるんだ。怪我が治ったら一緒にいこうな」
『ほんと!?いくいく!』
嬉しい誘いに笑顔になる
『…それじゃあ、早く治さないとね』
そう笑うと、炭治郎くんも微笑み返してくれた
藤の花
(鬼避けの効果のある花)