31:蝶屋敷


あのあと、私と胡蝶さんは、彼女の案内で、彼女の屋敷…蝶屋敷へと向かった


そのお屋敷は、名前の通り、蝶々が一杯飛んでいた


『…わぁ…』


「ふふ。…さ、中に入りますよ」


『あ、はい!』


蝶屋敷の前で、蝶の舞い踊る光景に見とれていると、胡蝶さんは、中にはいるよう、私に促した


中へ入ると、ある部屋へと案内された


「ここです」


『ここは…?』


「今日から、貴女のお部屋ですよ。好きに使ってもらって構いません」


『あ、ありがとうございます…』


部屋は綺麗に整頓されていて、部屋の本棚には、たくさんの書物が並んでいた


「では、ここで少し休んでいてください。この屋敷には、他にも人がいるので、呼んできます」


『はい、わかりました…』


素直に頷くと、胡蝶さんは微笑んで、部屋の襖を閉めた


部屋に一人になると、私は自然とため息をついていた


『…やるしかない』


この世界に呼ばれて、もうだいぶ立つけど…未だに、一人になると、あの夜の事が頭によみがえる


鬼に初めて出会って、襲われて…そして、お世話になった人を失った、あの夜のことを


その度に、恐怖が体を縮こまらせるけど…でも、いつまでも、立ち止まっているわけには、いかない


失っても、失っても…


今を、生きていくしかないから…





『…!』



ふと、ポロポロと、目から涙が溢れた


一人になって、感傷的になっているのかもしれない…



私は、ただ静かに泣いた






胡蝶しのぶ視点


「…」


みのりさんの部屋を出て、少しすると…部屋の中から、小さく嗚咽が聞こえてきた


お館さまから、彼女が天涯孤独であることは聞いていた


それでも、笑っている彼女は…どこか、無理をしているように、私には見えて


彼女を助けたい、そう思ったのは、少し前の自分と、彼女が重なったからからもしれない…




「…」


私は、そっと彼女の部屋の前から立ち去った


次にみのりさんの部屋に行ったとき…少しでも、彼女が笑ってくれたらいいと、そう思いながら、この屋敷の住人を、集めに向かうのだった










蝶屋敷

(ひらひらと舞う蝶に見とれ、昔の悲しみを思い出した)
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