15:旅立の日
「う、わぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
炭治郎くんの悲痛な悲鳴が辺りに響く
私は口許に手を当て、ショックからか声が出なかった
家の外には禰豆子ちゃんが六大くんを庇うようにして倒れており、唯一、禰豆子ちゃんだけ、まだ体に温もりが残っていた
それを確認する炭治郎くんの行動は速く、直ぐに禰豆子ちゃんを背負うと
「みのり!!町まで降りるぞ!!」
と言い、私をつれて山を降りていく
でも、私は山歩きが得意じゃなく、早く歩けない
これでは禰豆子ちゃんが死んでしまう
そう考えた私は
『炭治郎くん、先に山をおりて!』
「なにを言っているんだ!この周辺にはまだ禰豆子達を襲った奴等がいるかもしれない。この状況からしてみのりが無傷なのも奇跡なんだ!置いてはいけない!」
『でも、禰豆子ちゃんが…!』
そんな押し問答をしていると、禰豆子ちゃんがうううと低く唸る
『!?禰豆子ちゃん!?』
「!?っ、わっ!?」
それに驚いた炭治郎くんが足を滑らせた
二人は下へと落ちていく
『二人とも!!』
私は慌てて下を覗く
「…だ、大丈夫だ!雪が下敷きになって…」
『よ、よかった…』
ほっと息をついたのもつかの間、炭治郎くんが禰豆子ちゃんに近づくと、禰豆子ちゃんは炭治郎くんに襲いかかった
「禰豆子!?」
『禰豆子ちゃん!?』
私は慌てて下に降りようと駆け出した
『炭治郎くん、待ってて!すぐ行くから!』
「あ、危ないことはするなよ!」
その声を背に、少しずつ山を降り、炭治郎くんの元へと向かうと
「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」
『っ!!』
知らない人の声
私がそっと木陰から覗き込むと
炭治郎くんと羽織の男性が向き合って対立していた
男性からは、なんだか切ない音がしていた
男性が禰豆子ちゃんに刀を差し込むのを見た瞬間、耳鳴りがして、気が遠くなり、私は気絶した
大切な人が、また、目の前で失われてしまうのかと
ー…っ…い、おい!起きろ!みのり!
『っ!』
誰かに名前を呼ばれた気がして、私は目を覚ました
「目が覚めたか」
視界の先には、羽織の男性
「お前はあいつらと一緒に狭霧山の麓まで行け。それであいつは鱗滝左近次、お前は花山和音と言う人物を訪ねろ。冨岡義勇の紹介だと言え。…それから、今は日が出ていないから大丈夫なようだが、あいつの妹は日の光に当てるなよ」
それだけ言うと、彼、冨岡さん?は消えた
「…っ!」
『あ、炭治郎くん、起きた?』
炭治郎くんが起きたようなので、冨岡さんに言われたことをそのまま伝えると
「そっか…うん、わかった。伝言ありがとな」
『いえいえ』
私たちは、葵枝さん達を埋葬し、手を合わせたあと、そこを旅立った
「…行こう」
『…うん。行こう?禰豆子ちゃん』
「…」
私の手をぎゅっと握っている禰豆子ちゃん
…怖かったよね
痛かったよね
私だけ逃れてごめんね…
そんな思いで一杯ななか、私たちの旅は始まったのであった
旅立の日
(葵枝さん、ばあやさん、行ってきますね)