08:不幸中の幸い


そしてその日の夜…


私は枕元に炭治郎くんに貰った藤の花を生け、眠った


…ふと、夜中に目が覚める


…なんだろう、ぴちゃぴちゃと音がする


私はそっと起き上がり、辺りを見回した


すると、女性の甲高い悲鳴が聞こえた


私は思わず口に手を当て、声を殺す


どうやら私は驚くと声がでないタイプの人間のようだ


いったい何が起きているのか、私は状況を把握すべきなのか迷った


なぜなら、なにやら変な音がするのだ


人の物ではない、変な音が


…その音の主が、もし、人ではなかったら…?


そして…その、"人ならざるもの"が人を襲うものだったとしたら…私は逃げるべきだからだ


そんな風に思考を巡らせているうちにも、なにやら肉を引き裂く音が聞こえてくる


本能が告げている


"逃げろ"と


だが、逃げたところで逃げられるのか?


そんな人を襲う人ならざるものが普通の身体能力だとは思えない


だとしたら、私に今できるのは、息を殺し、朝が来るのを待つことだけ…


朝になれば、みんなが起きてくるだろうし、なんとかなるはずだ


私、がんばれ…!


そんなことを思っているとふすまがそっと開いた


『っ…!』


思わず口に両手を当てる


「…なんだァ?人間かァ?お前、そのにオイ…!マレチ!マレチだ!」


『まれち…?』


私は腰が抜けて動けない


「…ちっ!こっち来やがれ!!」


だが、相手は私の方には来ない


『…なんで…?』


…もしかして藤の花があるから…?


私は藤の花を抱き寄せる


「チィ…!」


私と相手のにらみ合い(相手の一方的)が続く

だが、どうやら私は運が良かったらしい

相手は窓の外を見ると舌打ちをして逃げていった

同じように窓の外を見ると、空に藍色が滲み始めていた…


『…はあ…』


なんとか助かったことに、ため息をつくと、疲れからか気絶するように寝込んでしまった





不幸中の幸い

(生きててよかった…ばあやさん、生きてるかな…)
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