すたすか | ナノ
※これの続きっぽい
「宮地くんに振られちゃった」
昨日、今から宮地くんに告白する、なんてなまえが言うから俺はまだやめた方がいいんじゃないかと止めた。宮地の視線の先はいつもなまえではない彼女にあったからで、なまえもそれは知ってたはずだった。なのになまえはいつになく真剣で、俺にはもう何も言えず、ただひとつ「頑張れ」と言うしかなかった。
「宮地、なんだって?」
「好きな人がいるから、私の気持ちには応えられない、って」
なまえは知ってるのになんで告白しちゃったんだろうね、と呟いた。違う、きっとお前は知ってたからこそ言いたかったんだろ?自分の気持ちに踏ん切りを付けるために。
「なまえは、強いよな」
俺は、怖くて、踏ん切りをつけることさえできない、から。
「強くなんかないよ」
「いやいや尊敬しますって」
「もう…犬飼くんからかわないでよ」
「俺ほんとのことしか言わねーよ」
「またー」
「…よく頑張ったな」
よしよしと子供をあやすみたいに頭を撫でてやると、糸がぷつりと切れたみたいになまえは泣き始めた。
「み、宮地くん、ね」
「おう」
「断ってくれる時も、優しかったの」
「おう」
「っく、すごく申し訳なさそうに言ってくれて、」
「おう」
「私の話にも、真剣に話してくれて、」
「おう」
「ありがとうって…それから、」
急になまえが泣くのをぴたりと止めた。さっきまで流し続けていた涙を腕でぬぐってから俺の方に向き直った、その表情が普段の彼女とは違って大人びた表情で、不意に俺の心臓が高鳴る。俺はそれを悟られないようになまえから乱暴に目を反らした。
「それ、から?」
「確信はなかったけど…宮地くんが言ってくれて、やっぱりそうなんだ、ってきっぱりけじめがついたの。いつからかわかんなかったけど、気付かない内に」
何が?宮地への恋心?確信はあっただろう、だってずっと宮地が好き好きと言い続けてきたんだから。俺が、いつからそんなお前を見てきたと思ってるんだ。そう続けようとしたのに、深呼吸を大きくしたあとなまえが紡いだ次の言葉に俺は身動きが取れなくなった。
だってそれは、俺がずっと、一番欲しかった、
「わたしは宮地くんよりもずっと………犬飼くんが、好きになってた、みたい」
俺は頭が一瞬で真っ白になって、とりあえず「冗談だった」とかなんとかなんてもうなまえに言わせないように、もうお前と頭の中で何回想像したかわからないキスを、再び涙を溢すなまえの唇に落とした。
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