ろぐ | ナノ




今朝、玄関から出ると真田がいつもどおりの中3には見えない老けがおのしかめっ面で「遅い」とお出迎えしてくれていた。
小学生の頃はこの表情にいちいち何なんだと思ってたけど、年を重ねる内にああこれは元の顔がそうなんだからなんだーと気にもならなくなった。成長したなあ私。

ふと手のほうに目を向けるとこのくそ寒い中で手袋もしてない。
寒いだろうに、馬鹿なの?

「真田手ーつっめた」

「そうでもなかろう。今朝は寒風摩擦してきたからな」

「寒風摩擦ねぇ…」

この真冬の朝に上半身裸でいるなんて正気か貴様は。
…すぐに想像できてしまう自分が怖い。うん。

「今度一緒にするか?」

いやいやアホか、私そんな自分を苦しめる苦行をやる必要性がないですから。
なんて言ってみたら案の定思った通りのセリフが返ってきた。聞きすぎて来るタイミングまでわかってきちゃったよ。耳タコってやつ?

「たるんどる!」

「すいませんね、最近食べ過ぎなんですー」

「お前の腹の話では無い!」

「じゃあ真田、饅頭の食べ過ぎなんじゃない?真田の家に置いてある饅頭おいしいもんね。でも冬だからって食べ過ぎちゃ、」

「俺の腹の話でも無い!大体俺は毎日腹筋と背筋等をだな、」

「はいはい!で、何?」

「大体貴様はいつも朝起きるのが遅いのだ…夜更かしして朝は寝過ぎるくらいなら寒風摩擦などでもしてして有意義に」

「じゃあ真田が朝部屋まで起こしにきてよ」

「何故俺がやらねばならん。お前のこういうだらしなさは普段の生活態度にも出て」

お前は私のお父さんか!と思わずツッコミたくなる真田の話は3分の2はシャットアウトすることにした。いつも長いから耳が痛いですよ、真田さん。
ん、いや、でも、待てよ。

「前に俺が教室で」

「いいよ、明日から朝早く起きて真田ん家行く」

「…ふむ。やっと朝を有意義に使う気に」

「違う違う」

「さすがだなまえ…っ何?」

「寒風摩擦はしませんよ」

「む、ならば何の為に」

「朝早く真田ん家行ったらさ」

「ふむ」

「真田と、いつもよりたくさんいられるでしょ」




反応が何も無いので耐えきれなくなって、真田の方をちらりと見るとら真っ赤になって「…動機がたるんどる!」と言ったのが聞こえた。
真田、たまに可愛いとこあるよね。





(きっと目がたるんで起きれる自信はないけど)