ろぐ | ナノ




授業中に抜け出して屋上まできて、コンクリートの上に座った。
まあ抜け出したとはいえ授業中だし、することもないなあ。
なのでいつもいるであろう伝説の屋上の主に語りかけてみることにした。

「こんなとこに毎日いるなんて、雲雀さんも案外暇人ですね」

「…」

答えはない。あの雲雀さんのことだから、私がいるのはとっくに気づいているんだろうけど。

「ねえ、雲雀さ」

言いかけたところで、ものすごく軽やかにかの有名な風紀委員長の腕章をつけて、学ランを纏いトンファーを掲げた雲雀さんが降り立った。生で見るのは初めてかも。

「ねえ君、咬み殺されたいの」

そう言う雲雀さんの目は人間の目にはとても見えない。まるで肉食動物。例えるなら、鷹か鷲のようだね、まあどっちでもいいけど。

「いいですよ、雲雀さんになら」

にこりと笑ってさあどうぞと言う。しばらく沈黙が続いたあと、さっきまで殺気立ってた顔が途端にふわあ、と欠伸をした。

「…興味が失せた。帰る」

とだけ言い残して肩に乗せたひよこ(ヒバード、って言うんだっけ)と一緒にぱたんと屋上のドアを開けていなくなってしまった。









で、あれからはや1ヶ月が経った。あの頃みたいに今日もよく晴れている。

「雲雀さんって雲みたいですよね。一人だけぷかーって浮かんでる感じ」

コンクリートの上に寝転がって、今も変わらぬ屋上の主に問いかけた。ほんとこの人何歳なんだろう。

「…」

未だに返事はない。毎日毎日まあこうやって私は授業を抜け出して屋上に来ては話しかけての繰り返しなのであきれてるのかも知れないけど。
あーなんか暖かいから眠くなってきた。

「雲雀さん一緒に寝ません?」

いつものごとく返答を期待したない問いかけ。
ゆっくり目を閉じる。あ、あくびでそう。

「…いんじゃない」

「…えっ」

雲雀さんがごろりと寝返りを打った。
声を聞くのは、初めて会った日以来だ。
ちなみに質問に答えを返されたのも。

すっかり気分がよくなって、私はふふんと眠りにつくことにした。






「今日はあったかいですね」

「…だから、なんなの」

「言ってみただけです」

「君ほんとに咬み殺したい」