ろぐ | ナノ




世の中は今まさに受験シーズンであり、高校三年生である私とアレルヤも例外ではなかった。

帰りの電車の中に乗っていてもペラペラと単語帳をめくる。
おんなじ受験生のはずの隣に座るアレルヤは単語帳も出さずに話しかけてきた。余裕だなお前。

「なまえ、電車の中でまでそんなことしなくてもいいんじゃない?まだ試験までは二ヶ月もあるよ」

「そうだけど、備えあれば憂いなしって言うし」

っていうか私はアレルヤみたいに頭が良くないから、これくらいしない心配なんですよ。

「アレルヤは勉強しないの?」

「僕は夜にするタイプだから」

「ふーん?」

夜かあ。それもいいねと思ったけどでもそれ多分今やらなくても受験一ヶ月前になったらやらなきゃならなくなるんだろうなと考えたらやっぱり今はやめようという気持ちになった。
そしてまたさっきみたいに、私は単語帳をめくりながら覚える作業に戻ることにした。




「ん」

めくった単語のひとつに目が止まる。
なんだっけ、なんて読むんだっけ、この単語。
考えてもわからなかったのでアレルヤに聞こうと思って顔を上げるとずしん、と肩が重くなった気がした。
なに?貧乏神でも乗った?

肩の方を見たらなんとまあすやすやと寝息を立てるアレルヤがわたしに寄りかかっている。
あれ、アレルヤ寝てたんだ。全然気付かなかった。
私の肩は値段が高いぞ、と起こそうと思ったけどそういえばさっき夜勉強してるとか言ってたし、眠かったのかも。ならしょうがない、今日は特別にタダで寝かせといてやろう。

そう思ってまた単語帳に目を戻した。


…。



「ってアレルヤ!」

「うわあっ!」

耳元で大声で叫ぶとびっくりしたように飛び起きた。うん、実にいい反応。

「わあごめんねなまえ。僕寝ちゃってた?」

「う、うん。まあそれはいいんだけどこの単語の読み教えてくれない?」

「いいよ、どれ?」

もちろんアレルヤの頭は私の肩から離れた。あ、危なかった。

あ、あんなんじゃ、どきどきして、勉強に集中とか、できるわけないだろ、普通!







「…こっちの身がもたんわ、このハブラレルヤ!」


「えっなに僕なんかした!?」

「別に!」