「先輩、」 「どうしたの?」 「先輩と、その、」
そういえば私、あのひとのことなんて呼べばいいんだろう…?名前、知らないや。 うーん…なんか雰囲気が白い色の猫…っていうよりもトラさんか。白いトラさんみたいだったし(ホワイトタイガーって言うんだったけ)白トラさんでいいかな。
「白トラさんって、なんかちょっと似てますよね」 「白トラさん?」 「あっ、探したい人の名前わからないんで仮のつもりでつけてみたんです…です、けど」
や、やっぱり勝手に名前つけたら悪かったかな。 先輩に聞いたほうが良かったかも…!
「じゃなくて、すいません白トラさんの名前って」 「ははっ、白トラっていいね。ぴったりだよ。名前は白トラでいいんじゃないかな」 「せ、先輩笑ってますよ」 「ふふっ僕も今度からそう呼ぼうかなあ」
よくわからないけどしきりに笑われた。な、なんか私、した、? そのあと何回聞いても先輩に白トラさんの名前を教えてもらえなかった。…名前、いいよね、白トラさんでも。 せっかく先輩に占ってもらったし、明後日まで、待ってみようかな。
「じゃあさようなら、みょうじさん」
私を寮まで送ったあとに牡牛座寮へと帰っていく先輩の姿にぺこりと頭を下げる。牡牛座寮からここは遠いので大丈夫です、と遠慮したんだけど先輩は夜女の子一人じゃ危ないよとここまで送ってきてくれた。…本当は怖かったから、すごく…安心しました。うう、金久保先輩、本当に今日はありがとうございました…!
なんか星月学園に来てからずっと優しくしてもらってる。私こんなので本当にいいのかな…。 でもここでなら変われる気がする。そうだよ、私は変わりにここにきたんだから。…変わらなきゃ駄目なんだ。 まだ新品の制服のリボンをぎゅっと握って、目をつむる。まだ忘れらない記憶を消すために。
あの子が前、彼が言ってた子かな。
確かあの子が来る前の日彼はそわそわしていた。確かそれは夜久さんが来る時以来だったように思う。
「面白いやつが来るぞ、誉!…か」
星詠みの力で見えた未来にはきっとあの子が映っていたんだろう。あんなにいきいきした彼を見るのは久しぶりだった。彼のことだ、きっとその彼女に真っ先に会いに行くだろうとは思ってたけど、まさかもう会ってるとはね。
「ふふっ」
さっきの彼女の光景を思い出して、少し笑ってしまう。彼の言う通り、面白い子が来たなあ。 でもなんか少し…もしかしてここに来る前に…何かあったのかな。
とりあえず明後日見えるであろう彼と彼女の対面が目に浮かんできた。ふふ、明後日が楽しみだなあ。
「ほ、誉様が微笑を浮かべていらっしゃる…!」 「こりゃ明日はいい天気になるなあ」
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