よし、もうそろそろ星が綺麗に見える時間かな。 一応ホロスコープを用意して寮の外に出るとむあっと熱気を感じた。もう夏、なんだなあ。
どこがいいだろ…あ、あそこよく見えそう! よく星が見えそうな少し高い丘に行くと、私以外にも人がいた。び、びっくりした…ってそうだよね。ここ星月学園だもん。星が好きな人ばっかりが集まってるんだから星を見にきたくなるのは、当然だよね。 邪魔にならないようにちょっと離れたところに移動して空を見上げると、夜空一面にぶわーっと星が広がっていた。わ、すごい。一言で表すならきれいとしか言い様のないくらいめいっぱいの星空。 そういえば最近忙しくて星なんて見えてなかったからなあ…… ってそうじゃないよ! 首をふるふると振って、持ってきたホロスコープをとりあえず空に翳してみる。多分これで占えるはず…
…うーん、よくわかんない…?というかこれで合ってるのかもわからないし…やっぱり習ったばっかりで星占いしようなんて甘かったかな…
ため息をついて、ホロスコープを地面に置く。やり方、わからなくなってきた…いいや、もう一度頑張ろう。 そう思ってまたホロスコープを空に翳した瞬間に、さっき丘に座ってた人がこっちに歩いてきた。も、もしかして私邪魔だったかな、うるさかったかな。いや、でも私に用じゃないかも…! かすかに希望を抱いてみたけどその人はやっぱりぴったり私のとなりに座った。ひい、すいません、ごめんなさい、謝ります、怖い…!
「…それ、ホロスコープだよね?」 「えっ?」
予想もしてなかった質問にびっくりした。 よく見るとその人も手にホロスコープを持っている。あ、あれ、まさか、星占術科の人?でもクラスで見たことない…あっ先輩かな。
「は、い」 「そうだよね。僕も西洋星占術科なんだ。3年の金久保誉です」 「あっやっぱり。あ、えと私は」 「知ってるよ。2年のみょうじさんでしょう?」
えっ先輩なんでわたしのこと知ってるんだろう…。ま、まさかもう2年のみょうじはバカでドジとかそういう噂が広まってたり…!
「ふふっ違う違う。この学園で女の子はほとんどいないからね」 「あっそれで」
よ、良かった。
「うん。それで君はどうしたのかな?うまくできた?」 「それが、その、よくわからなくて」 「何がだい?」 「まあ、色々なんです、けど」
基礎から全くわからないから占うなんてほんとにとんでもない。 そんなオロオロしてた私を見かねてかぽんっと手を叩いて金久保先輩が口を開いた。
「なんだったら僕が占ってあげようか?」 「えっほんとですか?」
自分の目がぱあっと輝くのがわかる。 見た目からすごく優しそうな人だなあとは思ってたけどまさか、占ってくれるなんて。ほんとこの学園には優しい人が多い…! で、では恐れ多くもお言葉に、甘えて!
「星占いで、探して欲しい人がいるんです」
言ってからハッと気づく。そういえば星占いで普通人なんて探せないよね…仮にも私も星占術科なのに…!ちょ、調子に乗っちゃって、馬鹿。
「な、なんて」 「いいよ」 「えっ」 「君がその人と会えるかどうかを占ってあげる」
金久保先輩が、手元にあるホロスコープを星空に翳す。 その姿はとても様になっていて、やっぱり三年生ってすごいなあと思った。…私も三年生になったらこんな風になれるのかな。む、無理そう…。
「そういえば君の探してる人ってどんな人なの?」
金久保先輩はホロスコープを除きながら口を開いた。 私はすっかりその様に見とれていたもんだから口がぽかんと開いていたらしく慌てて口を閉じた。ああもう、恥ずかしい。
「ええと、確か…」
ちょっと前のことだけど、昨日のことのように思い出せる記憶。えっと…声以外に…
「背が高くて、ちょっと強引?で、やさしい人だったような」
ってこれじゃあわかんないよ普通…!と思ってこれぐらいしかわからないですすみませんと謝ろうと金久保先輩を見たら、ふふっと笑てホロスコープを下ろした。…あれ、もしかして金久保先輩はその人知ってるの、かな。
「それなら心配しなくても大丈夫、明後日会えるよ」 「あ、明後日ですか?」
言葉の意味がわからなくておろおろしてしまう。なんで明日なんだろう?というかなんで金久保先輩はわかるんだろう?
「うん」 「それも星占いで、ですか」 「…ふふっそうだね。そういうことにしておこうかな」
金久保先輩はよいしょと立ち上がって手をどうぞ、と差し伸べられる。 私なんかが手、とってもいいのかな…でもせっかく先輩がさしのべてくれてるんだから。 そ…っと先輩の手に触れた。え、あ、このあとどうすれば、いいんだっけ、
「…みょうじ、さん?」 「は、はい!」 「…立たないの?」 「え…あっ!」
そうだ立つために手を貸してくれたんだった…! 顔がかっと熱くなる。て、てんぱりすぎ!しっかりしなきゃ!
「す、すいません!!」 「ふふ。面白いね、君」
あれ、なんかデジャブ。なんか前にもあの人とこんなことあった、ような、気がするような。 というかちょっと先輩と…あのひと似てるかも…?気のせい…かな。
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