これは、いつの記憶…ってああ、夢か。バカップルなお父さんとお母さんと、あとは星が見える。やけにリアルだな。
私が星月学園に来たのはもちろん星が好きだからだった。お母さんとお父さんは男ばっかりのこの学園に来るのはもちろん心配してたけど、それでもこんな聞き分けのない娘のわがままを許してくれたのはたぶん私よりしっかりした宮地くんがついていたからじゃないだろうかと思っていたりする。
そう思ったら宮地くんがぽんっと出てきた。今の宮地くんじゃない、中学くらいの宮地くん。今と違って眉間のシワか少なくて可愛…ってそうでもないわ。
宮地くんと私は小学校から一緒で、なんていうかお互いの両親の仲も良かったし、なんだかんだいいながらも腐れ縁みたいなやつでここまで来た。お互い星が好きだとか知らなかったから、宮地くんから星月学園に行きたいんだって聞いたとき、びっくりした。まさか高校まで一緒なんてね。どんだけ腐れ縁だよ!って突っ込みたくなったわ。
…でもちょっと私もやっぱり不安だったから宮地くんがいてくれて安心したし、嬉しかった。
宮地くんには感謝しつくせれないくらいいつも助けてもらってる。…なんて恥ずかしいから口には出さないけど!
中学生宮地くんがぱっと消えたと思ったら月子ちゃんが天から舞い降りてきた。ああ、月子ちゃんは本当に女神さまだなあ。
入学した当時は学園に女子1人かと思ってたけどまさかのエンジェル月子ちゃんもいてびっくりした。そりゃあ学園の女神と私なんかが一緒にいていいのかと毎日思うけどね。
月子ちゃんのスマイルが見たいなあと思ったら、仏頂面した宮地くんがまた出てきて、ぶわっと他のみんなもいきなり出てきて空を泳ぎはじめた。何してんのお前ら…馬鹿っぽいぞ…っていうか乙女の夢に勝手に出てくんなって…
「んー…」
「目、覚めたか」
目を擦って窓の方を見ると真っ暗だった。よかった、みんな空を泳いでない。さっきのはどんな夢なんだよ…。夢は自分の深層心理を表すっていうけど、よくわかんない上になんか嫌だ。
というかこんな時間まで私寝てたのか…しかし寒いな。ぶるりと身震いして、肩になんかがかかってるのに気づいた。あれ、なにこれ制服の上着?これうちの学校の?
私は着てるし、じゃあ誰の?
「ってみ、宮地くん上着!上着!」
「ああ」
宮地くんは気付いたのかとでも言うように読んでいた本から目を離す。
こんなに寒いのに、私に上着をかけるなんて己は馬鹿か!
「宮地くん絶対寒いだろ」
「いや別にそうでもない」
「上着、ごめん」
「気にするな。お前くしゃみをしていたからな」
図書室の電気もつけずに、こんな時間まで待っててくれたのか。どこまでコイツ面倒見いいの…蠍座ぱねぇ。
さっき見た夢ではかなりの仏頂面だった宮地くんも今は少し眠そうな顔をしていた。自分のこと後回しにするんだから…あーもーほんとに、コイツは。
「いいよ宮地くん、ちょっと寝ても」
「い、いや別に俺は、」
「下校時刻になったら今度は私が起こしてあげるって」
「だから、」
「うまい堂のお菓子今度おごるから!いいから寝てくれ!」
「…」
口ごもる宮地くんはうまい堂が効いたのかしぶしぶ寝る体制に入る。うまい堂すごいな…いつか世界平和とかにも貢献できるんじゃないのこれ。
しばらくするとすう、と小さい声で寝息が聞こえた。
いつもハードに部活で頑張ってるもんなあ。なのに今日も私なんかに付き合ってくれて、申し訳ない。
「…ありがとう、宮地くん」
今日もだけど、いつも。
普段だったら素直に言えないので寝てる隙に言っとこう。
これで聞こえてたら私爆発するからね!
そのあと寮に帰って朝になるまで先生に課題を出すのを忘れていて、宮地くんも私も担任にこってり怒られました。
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