「月子ちゃん。私さ、思うんだー…」

「なにを?」

「なんで、春になるとカップルは増えるんだろうね?」

季節は春で、まあまさに恋人を見かける季節である。…全く、全員爆発しろと言いたくなりもするわ。まあ学園には男子しかいないから、校内で見かけることはないけども。

「さあね…多分あれじゃない?」

「どれ?」

「卒業式とか、新しい節目を迎えるキリのいい時に告白しちゃおうってやつ」

「あーなるほど」

第2ボタンもらうもらわないでキャッキャするやつね、はいはいちくしょー爆発しろ。
別にいいけどね!そんなことするよりもこのおっきい桜の木の下で日向ぼっこしてるほうが楽しいから!

「でもさ、」

「うん?」

「私は、なまえちゃんと一緒にこうしてる方が、楽しいな」

これこそ頭上に咲き誇る桜に負けんばかりの百万ドルスマイルを私に向ける月子ちゃん。なにこの天使、あっ女神か…!

「わああああん私もだよ月子ちゃん大好きいいい」

がばあっと月子ちゃんに抱きつこうとするとじっとりと痛い視線で誰かが見ているような気が、した。誰だよ今から月子ちゃんルートに入ろうとしてるのに!

「なまえ、あんまり僕の月子にべたべたしないでよね」

「いつから君の月子ちゃんになったのかを詳しく」

頭にある触覚をピンと立てて桜の木の影から羊が体を半分だけ覗かせていた。その後ろからぞろぞろと哉太と錫也が出てくる。

「まあまあお前ら落ち着けって。ほら、弁当持ってやったから」

「やったー!」

本当はもっと月子ちゃんともっとおしゃべりしたかったけど、錫也が弁当を持ってきたなら仕方ない。私のお腹ももう限界だしね!

「何の話してたんだ?」

「んー、哉太はかっこいいねーって言う話?」

「なっ、」

哉太がボンと真っ赤になる。全く、面白いなあ哉太は。

「ばっか、冗談だよ」

「て、てめっ」

「ねえ僕は?僕の話はしなかったの?」

「うるさいぞそこの月子ちゃん馬鹿」

必要に迫るアホ毛ハーフを華麗にスルーする月子ちゃんを見ながら並べられた錫也のお弁当のおにぎりにかぶりつく。
うんおいしい。錫也のご飯はなんでこんなにおいしいんだろう。愛情の差ってやつかな。

「さすがオカン、今日もおいしい」

「そうだろ?今日のは塩だけじゃなくて隠し味に色々入れてみたんだ」

「マジかよ!俺もいっただきまーゲホッ」

ぱくんとおにぎりにかぶりついた哉太がいきなりむせる。おいおいどうした、ご飯粒散るから!

「そして今日のロシアンルーレットにはチョコレートだけじゃなくて苺ジャムも入れてみました〜どうだ?哉太」

そういう錫也の顔は心底楽しそうだった。今度は苺ジャム…か…。
哉太は月子ちゃんに入れてもらったお茶を一生懸命飲んでいる。可哀想に哉太…御愁傷様。

「わあ錫也、それすっごくおいしそうだよ!僕食べたい!」

「それならおにぎりを食べて当ててみてくれ」

「うん!」

毎度のことながら羊の味覚センスはどうかと思うんだけど、羊がいないと自分にそのおにぎりが当たっちゃうわけだし一種の毒物処理がか…ゴホン、まあ、ありがたい。











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