「夜久さんはきみの言うとおり、可愛い女の子だよ。でも僕は、名前がとても可愛い女の子だってちゃんと知ってるんだ」
「ほ、ほまれ」
「だから、自信持って大丈夫。一樹だって、知ってるよ。だからそんななまえを卑下するようなこと言わないで、僕が悲しくなる」




本当に悲しそうに眉を下げて、誉はまっすぐわたしを見た。誉はわたしのことも、一樹のことも、とてもとても大事に思ってくれている。そんなことわかってたはずなのに、誉が言葉にしてくれたことに、なんだかじわりと涙があふれ出てきた。雨のにおいも、なおさらわたしの心を温めるよう。誉は、とても優しい。




「昔のことはあまり僕も知らないけど、一樹の星読みの力は、どうやら月子ちゃんと関係しているみたい。それと一樹自身になにか影響を及ぼすみたいなんだ……詳しくは、なまえが一樹に聞いてみたらいいと思うよ。きっと一樹は真剣に聞いたら、真剣に答えてくれる。なまえもよく知ってるでしょう?」




知ってるよ。一樹も、優しいから。3人で過ごしてきたこの2年間、2人がとっても優しいことをわたしは1番知ってた。
あふれた涙がぽたぽたと零れて、スカートを濡らしていく。こぼれ落ちる涙に、ライトが反射してきらきら光ってまるで星のようだった。今まで見てきた星たちも、きっとこれから見る星も、形は変わらないけれど、それらを見ているわたしたちの形は、変わっていくのだろうか。なにも変わらないままで、大好きな誉と、一樹と、ずっと一緒にいたいって想いは星に願えば、叶うのかな。




「夏祭りが終わったら、また皆でラーメン食べに行こうよ、僕も行きたいな」
「……うん」
「夏休みが終わったら、あとはきっと進路でバタバタして、あっというまに卒業式。卒業したら、一樹もなまえも大号泣だろうな。色んなことが片付いたら、また3人でゆっくり遊ぼうね」
「…………うん」
「その前に、夏休み、めいっぱい楽しまなくちゃね、なまえ?」




傘をくるくると回しながら、ふふ、と笑う誉の姿が霞んできて、制服の袖で涙をこすった。泣いているのは誉も絶対気づいているのだけど、誉はわたしが泣き止むまで隣で一緒に黙って居てくれた。その時にはもう雨も、止んでいた。