進路や部活のことを誉にこれでもかっていうくらいに話した。誉と話すのも随分久しいけれど、こんなに話したのはもっと久しぶりだ。やっと一息ついたところに誉は話を切り出した。



「なまえ。一樹が、星詠みの力を持ってるのは知ってるよね」



一樹。さっきまで誉が一度も一樹のことを口にしなかったから、急に一樹の話になって一瞬わたしの体がぴくりと反応してしまう。



「…薄々、だけど」



星詠み。星詠み科は本来特別な力を持ってる人しか入れないから、きっとこの人も何かあるのかなあとは出会った最初の頃思っていた。でも一樹に聞いてみたらそのことに関してはするりとかわされてしまって結局一樹の口からは聞けずじまいだったけど、一樹はなんでかケガが多いし、留年もなにかしら関係があるのかとも思ったら、本当になんとなく、わかってしまった。



「一樹はそのことにあんまり触れてほしくないみたいだったから…」
「うん。僕もなんとなく感じたけど一樹があんな感じだから今まで言ってないんだ。特別力があるからどうってわけでもないし、きっとやめてって言っても聞かないから、友達としては見守るべきなのかなって、ね」
「…うん」
「夜久さんのことは?」
「月子ちゃん…は、なんか、…なんだろう、一樹は月子ちゃんのことすごく…気にしてるみたい」



気にしてるっていうのは色んな意味で…だけど。



「うん。それは僕も思う。…でもきっと、一樹の夜久さんに対するそれはきっとなまえが想像してるものとは少しだけ違うように思うよ?」
「…え?」



言われた意味がよくわからなくて誉を見るといつもみたいにのほほんとした笑いなのだけれど、ちょっとだけ意地悪そうな顔をしていた。誉でもこんな顔するのね…って、ちょっと待て。誉さん今なんと仰いましたか。何故かたらり、と背中に一筋、冷や汗が伝った。


「好きなんでしょう?一樹のこと」



確信めいた誉の笑みに、ああこの人には隠し事はできないなと悟った。さすが、金久保さまです。
多分否定しても意味がないと、さすがのわたしでもわかったのだけれどさすがに「はいそうです」とすんなり認めるのはやっぱり恥ずかしいので顔を自分の太ももに埋めて顔を隠す。あー、顔、絶対、真っ赤だ。その様子を見て誉がくすりと笑った。



「…ご名答」
「ふふ」
「…いつから知ってたの」
「うーん、今年に入ってからかな。確信したのは」
「…と、言うと」
「2年に上がって、夏祭りに皆で行ったよね?そのとき『あれ?』って思ったんだ」
「なんで」
「だってなまえ、花火のとき一樹のことずーっと見てたでしょ」



おそらく自分は今俗に言う鳩が豆鉄砲を食らったような顔というやつをしている。え、なに、知ってたのか、誉。



「なんとなくね」
「…そっ、か」
「だから助言するけど、夜久さんと一樹は多分そんなのじゃないと思うよ」
「…でも、」



にっこり笑う誉に私は口ごもってしまう。本当に?そんなこと。なんて、私は信じたい事実をまた拒絶してしまう。



「でも、月子ちゃん可愛いし、女神だし、料理うまいし、私なんて、きっと0の状態からだって月子ちゃんには、」



敵いっこないじゃない、と、わたしは続けられなかった。それは、



「…なまえ」



今までに感じたことのない、誉から強いものを感じたので、わたしは話の続きを紡ぐことができなかったから。