2012/01/15
「星を見に行くであります」
7月7日、午後22時23分。天気は昼、朝から見る限り現在は…いいえ、これはわたしの大切なあの人と確認したいと思い、彼の部屋の扉を開けようと思ったのですが鍵が施錠されているらしく開きません。しかたない、無理矢理にでも扉を開くであります。
星を見に行こうと告げると、彼に了解を戴けました。…本当は、彼の口癖の「どうでもいい」と言われたらどうしようかと(まあ別に言われたとしても行きますが)思っていたので安心、安心であります。
「でも、なんで星を?」
階段を降りるときに彼が、少し予想外の質問をしたので驚きました。寮のみなさんも、月光町のみなさんも今日は星を見ようと朝からそわそわしていたので、当然湊さんも知っていたのだと思っていました。しかし私も今日までそんなに気にしていなかったことなので、なんとも言えませんが。
「今日は『七夕』。一番見たい人と天の川を見る日だとゆかりさんたちから聞きました」
★
そうだっけ…?と曖昧な記憶を辿って、そういえば今日は7月7日だったと思い出した。あれ、でも、今日は…。
寮の扉をがちゃりと開けたアイギスからはっきりとした落胆の声色が聞き取れた。
「雨…」
そう、確か今日は雨が降っていたはずだ。雨が降っていたら当然雲が空を覆い隠していて星空なんて見えるはずがない。それは七夕とて同じだ。でもアイギスならば今日の朝や昼の天気からしてこのことを予測することが出来た、と思うんだけど。
「…分かっていました。けれど…」
「けれど?」
本当に天の川を見えなかったことがショックだったみたいで、アイギスは下から顔を上げずに口を紡いだ。
「予測や予報で見えないと言われても、信じたかったのであります…きっと晴れる、と。あなたと見たかったのであります」
まっすぐ僕に顔を向けて、瞳を合わせるアイギスの表情は、こういうのもなんだけど人間の女の子だった。無感情なロボットなんかじゃない。ちゃんと、アイギスは。
「アイギスの目、綺麗だね」
「目?私の目、でありますか」
不思議そうに自分の目をぱちくりさせるアイギスは、可愛い。
「うん。ビー玉みたいで、星みたいだ」
「…星」
吸い込まれそうだよ、と言うとアイギスはまた下を向いてしまった。どうしたんだ、エラーでも起きたのか?
しばらく経っても動かないのでどうすればいいのか迷って、とりあえず空から降り注ぐ雨を見つめていると、ぱっと急にアイギスは顔を上げた。心なしか、その顔が赤いように見えたのはきっと気のせいなんかじゃないだろう。
「…嬉しい、です」
いくつもインプットされている言葉の中から選択された言葉を選ぶような言い方じゃなくて、アイギスの心の底から出てきたようにアイギスはふわりとはにかんだように笑った。
やっぱりアイギス、君は無機質な対シャドウ戦闘用ロボットなんかじゃない。
君は、ただの女の子だよ。
◎フォルダ漁ったら以下略。
たぶん七夕に書いたのだと思われ