ごみばこ | ナノ



2011/12/08


夕暮れのオレンジの光を背に、ただふらふらとひとりで歩く。寮までの道のりがこんなに長く感じたことは未だかつて無く、鮮やかなオレンジの光を煩わしいと感じたことも初めてだ。

頭のなかには、朝の、光景。
二人が付き合うことは俺の願望であった、はず、だったのに。
二人からその言葉を聞いた瞬間と二人の態度、見つめあう視線、も何もかもが嫌になった。なのに俺は相も変わらず昔からお得意な笑顔の仮面を貼り付けて「おめでとう」なんて笑った。思ってないことはないのに。ただその言葉を言うのがどうにもだるくて、鉛を胃から吐き出すように重かったんだ。俺がこの日が来るのをどれだけ待ち望んだと思ってるんだ。二人に幸せになってほしいという気持ちに嘘はない。お前らの、俺は保護者だぞ?


「錫也に一番に、伝えたかったんだ」


鼻をこすりながら照れ臭そうに笑う哉太は昔と全然変わらなくて、思い出して何故か俺に突然罪悪感が芽生えた。そうだ、哉太はずっとずっと昔からこいつのことが好きだったんだ。ずっとずっと昔から俺はそれを応援してきたんだから喜ばしいはずだ。俺が喜ばないでどうする。


「昔から応援してたからな〜」
「えっ錫也知ってたの?」
「当たり前だろ、お前の幼馴染みだぞ?」


あんなに『幼馴染み』という言葉を嫌になったのも初めての感覚すぎて、頭が痛くなった。月子と哉太と俺、3人で今までずっと一緒にいた。楽しかった。だけど、それは『幼馴染み』だから、なのか?俺が『幼馴染み』じゃなかったら、哉太と月子とこんなに家族くらい大切な友人になり得なかったかもしれない。それは二人と過ごす楽しい時間が大半の俺の人生を大きく変えることになるだろうが、だけど、もし、違ったら?哉太にはただのお節介焼きなクラスメイトで、月子には男として認識されていたのだろうか?この二人とは違う友人がいて、それなりに可愛い彼女もできていたのか?

そこまで考えて、急に怖くなった。
俺は、そんなの嫌だ。


「錫也は保護者だもんね」
「オカンだろ〜」



そうだよ、俺はお前らの保護者なんだ。今感じてる、この気持ちは親が感じる子離れの寂しさというやつなのだろう。保護者、保護者。お前らはオカンとか保護者というけどその立場に固執していたのは俺だ。二人と、一緒に居たいから、俺は保護者になったんだ。今この瞬間から、俺はお前たちの保護者でなくなるのかな。今まで築いてきた関係なんて、あっけなく脆く、崩れてしまうのか。それが怖くて、たまらなかったんだ。


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