「椿、手出して」 唐突に言われた言葉に、椿は首を傾げた。躊躇いがちに差し出した手に乗せられたのは、二粒の砂糖菓子。 「……金平糖?」 手のひらで存在を主張するそれを、椿は珍しそうに眺める。独特のとげのような突起が可愛らしい。 「どうしたんですか? こんな貴重なもの」 「おねね様に貰ったんだよ」 ふてくされたように顔を背ける半兵衛。原因は容易に想像がつく。……大方、ねねに子供扱いされたことを気にしているのだろう。 「戦で頑張ったご褒美、だってさ」 「おねね様らしいですね」 「……はあ、俺、金平糖で喜ぶ男に見えるのかなー」 がっくりと肩を落とす半兵衛の隣で、椿は苦笑した。 金平糖を一粒つまみ上げると、太陽の光に照らされてきらきらと輝いて見える。 ……まるで、星のようだ。小さな粒をじっと見つめながら、椿は緩やかに微笑む。 「いいじゃないですか、金平糖。私なら嬉しいですよ?」 「じゃあ、椿が貰えばいいじゃん?」 言いながら、半兵衛は両手を頭の後ろで組んだ。椿に背を向け、空を仰ぐ。 「あげるよ、それ」 「え、いいんですか?」 「だって、欲しそうな顔してるし。元々椿にあげるつもりだったから」 ありがとうございます、と礼を言いながら、椿は手のひらを半兵衛に差し出す。 「では、一粒ずつですね」 「いや俺は……んむっ」 言うが早いか、強引に口に押し込まれる。 ――懐かしいような優しい甘みが口の中に広がり、淡く溶けて広がった。 半兵衛が飲み込んだのを確認し、椿はゆっくりと指を離す。そして、もう一粒を自分の口にも含み、微笑んだ。 「おいしいですね」 「…………うん」 頷いた半兵衛の頬は、ほのかに赤く染まっていた。 ← |