ほのぼの甘/料理ネタ 箸を口に運び、椿は頬を綻ばせた。 「おいしい!」 「当然じゃ。これはどうじゃ? わしの自信作よ!」 「こっちもおいしいです……!」 研究に研究を重ねた故、うまくないはずがない。 鼻高々に次の料理を勧めるわしに、椿は何度も頷いた。こう素直にほめられると、作りがいがあるというものだ。 自然とわしの頬も緩む。 「どうして、政宗様の料理はこんなにおいしいんでしょうか」 不思議そうに問う椿。……異なことを聞く。わしは暫し考え、一言呟いた。 「隠し味じゃな」 「隠し味、ですか?」 「料理は心じゃ。食す者をもてなす気持ちよ」 「……なるほど」 おいしいと喜ぶ椿の、笑顔が見たい。こんなことわざわざ口には出さぬが、料理に相手を想う気持ちを込めておるのは確かじゃ。 「私は幸せ者ですね」 「大袈裟な奴じゃな」 大事そうに噛み締める様に、わしは呆れ笑う。 「本当にそう思うんですよ? 大好きですから」 「なっ……!?」 何を言い出すのじゃいきなり! むせそうになるところをなんとか堪え、唾を飲み込む。そんなわしに、椿は無垢な笑みを浮かべ、こう続けた。 「政宗様の料理は本当においしくて、大好きです!」 「……そ、そそそんなこととうに知っておるわ馬鹿めっ!」 な、なんじゃ料理のことか……勘違いさせるでないわ! 紛らわしい! わしはうるさいくらいに高鳴った心臓をごまかすために、試食させたき皿を乱暴に差し出した。 ← |